Soledad Montoya ソレダー・モントヤの黒い哀しみ

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“Soledad y el mar,” la parte cuarta, y “Dos trenzas gitanas,” la parte segunda de “Soledad Montoya,” mi obra nueva inspirada por la “Romance de la pena negra” de Federico Garcia Lorca.

“Soledad and the sea,” the 4th movement, and “Two gypsy braids,” the second movement of “Soledad Montoya,” my newest composition inspired by Federico Garcia Lorca’s “Ballad of the black pain.”

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これは、「ソレダー・モントヤの黒い哀しみ」とタイトルした、クラシック、ロック、ジャズ、フラメンコなどの魅惑的なギターの奏法を駆使した5曲構成による新作オリジナル組曲中のなかから、最も短くシンプルな構成を持つ2曲、第4楽章、アダージョの「ソレダーと海」と、第2楽章、フラメンコを代表するアレグロのリズム、”ブレリーアス”を使った「黒髪のジプシー」の、一般には公開していない自宅練習動画。

ガルシア・ロルカの傑作詩集、「ロマンセーロ・ヒターノ(ジプシー歌集)」におさめられた、著者自身のイラストによる、若いジプシーの女性が主人公の「黒い哀しみのロマンセ」という詩にインスピレーションを受けたものだ。

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黒い哀しみのロマンセ (大竹史朗訳)

”ニワトリたちが大地をつつきはじめる オーロラの夜明け
ソレダー・モントヤが 暗い山をおりてくる

銅色のからだ 馬の匂い 豊かな胸
そして嘆きの歌

ソレダー あんた なんだってこんな夜明けにたった一人で歩いているの
あんたには関係ないでしょ あたしはただ あたしが探すものを探しているんだから

木の葉がさざめく オリーブの大地が広がる

ああ ソレダー!あんたの哀しみはなんて深いんだろう!

あんたのからだと服には 黒い哀しみがしみこんでいる
糸で編んだブラウス そしてアマポーラのような脚にも
そして 台所からベッドの部屋までとどいてしまう あんたの地をはうような黒い長いおさげ髪 

まるで暴れ馬のように やがてソレダーは海にたどり着く
そして波が 彼女を呑みこんでしまう

私は狂った女のように 家へ走り帰る
レモン汁の酸っぱみのように 希望が泣きながら口を濡らす
もう私に 海を思い出させないでおくれ!

ソレダー・モントヤ アロンドラの水であんたのからだを洗ってしまうんだよ
そして あんたの心が安らかであるように
ソレダー・モントヤ!

空を舞う木の葉 川が歌う
カラバーサの花とともに 新たな光が燃え上がる

ああ ジプシーの哀しみは とってもきれいでいつもひとりぼっち
川底で泣いている 遠い夜明けのように

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この詩の日本語訳はとてもむずかしく、決して完全だとは思わないが、ソレダー・モントヤという女性は、ガルシア・ロルカにとって、アンダルシアに暮らす全てののジプシーのプエブロ(民衆、町、集落、そして国までを意味する広域スペイン語)を表す代名詞を言ってよいだろう。

この優れた文学者はかつて、あるインタビューでこんなことを言っている。

”私はアンダルシア人だ。ジプシーではない。よくこの二つは混同される。しかし、アンダルシアに生まれたものが、みなどこかジプシーらしさを持っていることは否めない。では私にとってのジプシーらしさとは何か? それは本と文学だ。” 

(「ガルシア・ロルカ全作品集」より 大竹史朗訳)

また彼は、別のインタビューで、”カント・ヒターノ(ジプシーの歌)”について尋ねられた後、下記のような興味深いことを語っている。

”カント・ヒターノ(ジプシーの歌)”を本当に知る人々は少ない。なぜなら、現在タブラオ(フラメンコのライヴ酒場)で頻繁に演奏されるのは”フラメンコ”と呼ばれるもので、それは(ジプシーの歌の)”退化”でしかないからだ。ただし、これはあまりにも広範囲にわたる話で、少々新聞記者的内容になってしまうため、このインタビューですべてを一言で答えられるようなことではないが、ジプシーの歌を理解するには、まず彼らの母親観について理解する必要がある。ジプシーたちは母権制の社会のなかで暮らしているので、彼らにとっての”両親”とは、我々の考える両親とは異る。すなわちジプシーたちは、つねに”女親の子孫”であるという意識のもとに暮らしているのだ。もちろん彼らの歌のなかにも、男親について歌われているものが全くないわけではないが、その数は極めて少ない。ジプシーたちが、その人生において最も大切におぼえていること、それは彼らの母親についてだけなのだ。 

(戯曲「ベルナルダ・アルバの家」巻末付録より 大竹史朗訳)

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ぼくにとって、アンダルシアの”ジプシーの歌”とは、まさにアルゼンチンの伝統音楽の”母”といってよいものだ。ぼくは数年前、そのことを、パコ・デ・ルシアの最後のアルバムとなった「アンダルシアの歌」のなかの、”あんたを愛してる 生きている限り”という歌をを聴いて確信した。

ぼくは生涯にわたって、心から愛するアンダルシア、そしてアルゼンチンの美しい芸術の”子どもたち”でありたい。

新作「ソレダー・モントヤの黒い哀しみ」は、その決意と覚悟を改めて皆様に示すことのできる作品だと信じている。