shiro のすべての投稿

涙の音色‥‥ポルトガルギター、`ダヒュ`に導入

ポルトガル・ギター

今回、日本に到着した私を迎えてくれた素晴らしいプレゼントがありました。
ポルトガルの民俗歌謡`ファド`に欠かすことのできない、`ハート`のかたちをした美しいボディーシェープと、潮風の香り漂う調べにふさわしい貝殻を模したヘッドシェープ、そしてさらにその貝殻におちるひとつぶの涙をかたどったトップをもつ小型ギター、`ギターラ・ポルトゲーザ -Guitarra Portuguesa-(ポルトガル・ギター)`です。

貝殻におちた涙ひとしずくが心にひびき、音色となってむせび泣くといった感じでしょうか。
素晴らしいデザインです。
(なお、スペイン語圏諸国では、通常私たちが`ギター`とよぶ楽器のことを`ギターラ`といいますが、ポルトガル語圏の本国ポルトガルやブラジルでは、`ギター`を`ヴィオロン`とよび、`ギターラ`という言葉はこのポルトガルギターをさすのだそうです。起源は古く、もともとこのシェイプをもった楽器はインド生まれで、それが東へ渡ったものが日本で琵琶となり、西へ渡ったたものがポルトガルでギターラとなったといいます。)

実はこの`ギターラ`、現在日本ポルトガル協会長でいらっしゃる高野悦子さんからのプレゼントなのです。
名手カルロス・パレーデスさんの使用楽器を作っていたことで知られる、ジョアン・ペドロ・グラシオ・ジュニオール氏が1962年に高野さんのために製作した、コインブラ・スタイルによる、たいへん歴史的にも価値のある銘器です。
製作者の心がこめられた楽器は、音を出した瞬間にわかるものです。
このギターラ、半世紀近くも前に生まれたものであるにもかかわらず、ボリュームのある素晴らしい音色にはなんともいえぬ哀感がただよい、おそらくこれからの私の音楽にとって、きっと大切な役割を担ってくれることまちがいありません。

ポルトガル・ギター

サウダーデな夜に...悲しいわだち

アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 V

2005年ペルー公演

10月22日の夜に、ファド、シャンソン歌手のはらだじゅんさんと共演するライヴ。
私はこのところコンサートにおいて、必ずと言っていいほどユパンキの’栗毛の馬’をオープニング・ナンバーとして演奏しています。
フォルクローレ・ギターの醍醐味ともいえる、クラシカルなフィンガーピッキングスタイルとダウン・トゥー・アースなリズム・ストロークのミックスによるこの魅惑的なナンバーは、私にとってまさに人生を決定づけたといってもいい記念碑的な作品ですが、今回のライヴでは、なんとはらださんがぜひともこの曲のインタープレテーションに挑戦したいとおっしゃいます。
そこで私は彼女の熱意をリスペクトして、この曲に関しては伴奏のみにまわり、そのかわり、やはり私が心から愛してやまない、深いメッセージをもつナンバーをオープニング・ナンバーとして選びました。
それが、ユパンキ初期の傑作曲のひとつ、’悲しいわだち’です。

2005年ペルー公演

写真は、2005年11月に、ペルーの首都リマで行った’アタウアルパ・ユパンキへのオマージュ公演’において、’悲しいわだち’、’ギジェルマおばさんに捧げる歌’、’トゥクマンの郷愁’、’眠れるインディオの子’、’兄弟たち’、’牛車にゆられて’、’トゥクマンの月’、そして’牛追い’などの名曲を、つめかけた1200人のお客様を前にたてつづけに演奏する私。
‘悲しいわだち’の公的演奏は、このとき以来となります。
フォルクローレの故国でのこのリサイタルは、アンコールだけで30分間をこえ、トータルで2時間40分におよぶ、聴衆と演奏者が一体となった、文字通り私のキャリアの上での最高のコンサートとなりました。
そして今年の11月、私は二年ぶりにペルーを訪れ、今度はアンデスのはるか上空、マチュピチュにおいて演奏を行う予定です。

続きを読む サウダーデな夜に...悲しいわだち

Querencia …

アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 IV

Cus20181_sm

Querencia(ケレンシア -故郷への想い-)

みな 自分たちの故郷について語る
あたかも そこがいちばんであるかのように
俺が想いをよせる故郷とは 一本の道
月と太陽の下にある 一本の道
調べひとふし歌おうか
星が俺の声を 満たしてくれる
そして風が 流れる雲に言い寄れば
俺の歌は 霧となる
俺は はるか遠い里(さと)からやってきた
俺の里の名は...轍(わだち)
俺が胸に抱く愛の名は ギター
そして俺の馬...*パシエンシア
夜更けに俺は 心の中をみつめて歌う
夜明けの光をもとめて
そして 広がる野をみつめながら
希望に焦がれ 歩き出す
みなそれぞれが それぞれの故郷をもち
あたかもそこが いちばんであるかのように語る
俺が思いを寄せる故郷とは 一本の道
月と太陽の下にある 一本の道

(*パシエンシア -Paciencia- 辛抱、忍耐、根気。 英語の’Patience< ペイシェンス>‘に同じ。)

続きを読む Querencia …

Piedra Sola – ひとりぼっちの石-

アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 III

aapiedra

海、山、風、川、森、平原、木々、花々、そして動物たち。
自然界のなかでともに生きるものたちとの心のふれあいを美しい詩にたくして謳いあげたアタウアルパ・ユパンキ。
以前、さすらいの旅人と、それを見守る木々との素晴らしい心の交わりをテーマにした’郷愁の老木’についてふれました。
今回は、前述の’ギターラ’と同じく私の愛読書であり、ユパンキ名作詩集である’ひとりぼっちの石 (ピエドラ・ソラ)’のなかから、路傍にひっそりと佇む、まるで忘れ去られてしまったような石との心のふれあいを謳った、同タイトルによる作品をご紹介したいと思います。
‘ひとりぼっちの石’は、詩集のトップにある、’デディカトーラ’とよばれるユパンキ自身による献呈文のあと、この名作詩集の冒頭を飾る作品としておさめられています。

詩集 ‘ひとりぼっちの石 ‘より
デディカトーラ (献呈文)

俺の大地よ!
お前の抱く山々の 
その道の上で
俺の心は これらの言葉に出会った
その 大いなる
その 決して言語におきかえることのできないものが
俺のなかに宿った
まるで お前がもつ
静けさにみちた 宇宙のような力に 
奥深く守られた 音楽の調べのように

- アタウアルパ・ユパンキ

続きを読む Piedra Sola – ひとりぼっちの石-

Un Encuentro Inolvidable …..

スペイン王妃との出会い 組曲’マリア・ルイサの城’

maria_luisa1

ギターのサウンドを楽しんでいただけるオーディオ・ページが新しくできました。
今日は、私のオリジナルギター組曲、’マリア・ルイサの城’をご紹介します。
この組曲は、私がこれまでに体験したもっとも不思議なできごとをもとにイメージを膨らませて音楽化し、さらに、バロック、スパニッシュ、フォークロックと、私がもつアコースティック・ギターのテクニックをすべて駆使したアレンジを加えて完成させた、文字通り’ギター音絵巻’とよべるナンバーです。
(美しいイラストは、このナンバーを収録したCDのジャケット・デザインを担当してくださったイラストレーター、芙似原由吏(ふじわらゆうり)さんによるものです。
実際私が出会った王妃のイメージは、むしろこの由吏さん最初の作品のほうが近く、とても気に入っていたのですが、こちらでデザインを決定する段階で、「まるでカレン・カーペンターのようだ(?!)」という、いかにもアメリカ人らしい意見があったため、結局彼女がわざわざもう一度描きなおしてくださったものがアルバムジャケットとしてこのCDを飾ることになりました。
私はいまでも由吏さんに対して、このときのことを感謝しています。)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

それではご一緒に、マリア・ルイサのお城探検へと参りましょう!

続きを読む Un Encuentro Inolvidable …..