アルゼンチンフォルクローレについて
アルゼンチンフォルクローレは、もともとアンデスの先住民であるインディヘナの文化に、スペインのギター音楽をはじめとするヨーロッパの香りがミックスされ、それが広大なアルゼンチンの土の上で育まれた魅惑的な民族音楽ですが、ギター音楽のひとつのカテゴリーとして、巨匠アタワルパ・ユパンキの手により世界的芸術の位置にまで高められました。
ここではその代表的なリズム形式についてふれてみました。
・ミロンガ Milonga
ブエノスアイレス、パンパ州を中心とする大草原地帯の伝統的リズムで、ガウチョ(牧童)たちが労働のあと、思い思いにギターを手に弾き語ったのがはじまりと言われています。 故にギター一本で演奏されることが多く、そのほとんどが八分の六拍子によるアルゼンチンフォルクローレのなかでも、ゆったりとした四拍子による、独特の哀愁を帯びたムードが特徴です。代表曲「牛車にゆられて」「兄弟たち」
・サンバ Zamba
世界的に有名なブラジルのサンバとはまったく異なる形式で、アンデス山脈に起源をもち、北部のトウクマン、サルタ州が本場です。ギター以外にも、ボンボ(牛の革で作られた、肩から吊るす大太鼓)や、ヴァイオリン、バンドネオンなどが伴奏に加わり、また、美しく着飾った、ガウチョとチニータと呼ばれる男性舞踊手と女性舞踊手 が、右手にハンカチをかざして対になって踊る振り付けの優雅な美しさは たとえようがありません。アルゼンチンフォルクローレのなかでも、もっともポピュラーなリズムがこのサンバです。
代表曲「トウクマンの月」「こおろぎのサンバ」
・チャカレラ Chacarera
中部のサンティアゴ州およびコルドバ州の代表的リズムで、アルゼンチンフォルクローレ中でも最も速く、快活なリズム形式による舞曲です。ベース音を弾く親指と、人差し指と中指ではじかれるハーモニーの生み出すタイム感と、ラスゲアードと呼ばれる激しいストロークによるリズムカッティングは、フォルクローレギターの醍醐味といえるでしょう。ほぼ同形式のリズムに、スペイン語で‘猫’を意味するガトGato があります。
代表曲「石のチャカレラ」「恋する鳩の踊り」
・カンシオン Canción
スペイン語で‘歌’を意味する形式で、とくに決まったリズムや特徴はなく、ギターの美しい調べと歌とのかけあいによって自由に演奏されます。そういったことから、歌われる世界はきわめて深みのある内容であることが多く、フォルクローレギターによる弾き語りの頂点的なスタイルと言っていいでしょう。
代表曲「郷愁の老木」「微笑みながら坊やは眠る」
・チャジータ Chayita
ワインの産地で知られる、ラ・リオーハ州の代表的なリズムで、収穫祭のときににぎやかに歌い踊られます。 チャカレラ同様、ラスゲアードとフィンガーピッキングによる複雑な奏法が魅力です。代表曲「ギジェルマおばさんに捧げる詩」
・ビダーラ Vidala
スペインを起源にもつこのゆったりとした魅惑的な調べは、ギターで弾かれたときに最も効果的な響きをもつリズムです。ブリッジ(ギターの弦を下方でとめている部分)を親指を半転させて叩く、太鼓の音を模した独特の奏法が特徴です。
代表曲「わが影へのビダーラ」「雪、風、そして太陽」
・バイレシート Bailecito
アンデス山脈起源の速いリズムで、ボリビアとの国境に位置する最北端の州、フフイが本場です。代表曲「牛追い」「インディオの道」
・カルナバリート Carnavalito
アルゼンチンフォルクローレに限らず、南米フォルクローレの決定版といえばこのリズムと言ってまちがいないでしょう。ケーナ、サンポーニャなどの笛に、チャランゴ、ギター、そしてボンボが加わり、二拍子で奏でられるアンデスの調べは、フォルクローレの最も代表的な形式です。
代表曲「コンドルは飛んでゆく」「花祭り」
2005年05月01日 | Shiro's hideaways(シロの隠れ家)
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