Southern Landへの想い Final Chapter

1988年に単身ニューヨークに渡り、ユパンキと出会い、そしてギタリストとしていろいろな国で活動をなどと聞けば、すべてがトントン拍子で進んだようですが、実際は決してそうではありません。
いろいろなことがとにかく最悪であった年1991年、私は、知り合いをたよってニューメキシコ州に移り、観光牧場の住みこみ乗馬ガイドとして働き半年を過ごしたのです。
そのとき知り合った数多くの素晴らしい人々。音楽はカントリーしかしらないカウボーイに、素朴で可憐なチカーナ(アメリカ生まれのメキシコ女性)たち。
なんだか開拓民のムードをそのまま残しているような彼らと過ごした時間は、私にとって、多くのことを学んだかけがえのない体験となりました。

そして、アミーゴになった、ナバホの血をひく青年がくれた一冊の本、"ネイティヴ・アメリカン・ウイズダム"。
誇り高き北米先住民の英雄たちの語録集が、ふたたび私に、ニューヨークへ戻るエナジーを与えてくれたのです。
その後私は、ニューヨークのスラム街のバーやクラブでギターを弾きだし、やがて人生を決定づけることになるユパンキの詩、"ヒロシマ 忘れえぬ町"と出会うことになります。

写真)1991年に、New World Libraryから出版された Native American Wisdom。
頭のうしろからコツンとたたかれたようなハッとする言葉の数々に、当時の私はどれだけ勇気を与えられたかわかりません。
彼らのものの考え方は、その後の私に大きな影響を及ぼしました。

1991年当時の私。
朝は3時起き、ほぼ一日中馬の背中に乗っていました。
用事を言いつけられてトラックで外出したときの最高の思い出がこれ。
あるガソリンスタンドの店員との会話です。


店員(以下 T): お前、どっから来たんだ?
私 (以下 W): 俺はニューヨークに住んでいるんだが、いまちょっとわけありでここにいる。
T: へー、ニューヨークか?じゃあ、ナンシー知ってるか?
W:(思案して)ナンシーって誰だ?
T: 俺のガールフレンドだよ。
W: ....。

さすがの私もそのとき、余生をここで過ごすことになるのかとかなり不安になりました。

私にとっての三種の神器(?)。
ナイフとブレスレットはナバホ、ベルトのバックルはズニの人々が作ったものです。
ブレスレットにデザインされた鳥は、ネイティヴ・アメリカンたちの間で「サンダーバード」と呼ばれる伝説上の巨大な鳥で、直訳してよく誤解されますが、雷鳥のことではありません。
興味のある方は、こちらのサンダーバード伝説サイトをぜひごらんください。

NYの私の部屋の、ミニ・ネイティヴ・アメリカン・ミュージアム。
彼らの間では、自然界におけるすべての事物に神が宿っていると信じられており、それらに感謝をこめて踊る習慣をPow Wow(パウワウ)とよびます。
上の段にあるのは、Kachina(カチーナ)Dollといって、パウワウ・ダンサーを人形化したもの。特に、右からふたつめの「戦」を象徴するナバホのアーティスト作によるカチーナは、モニュメント・バレーのビジター・センターで一目ぼれ。購入しました。
カチーナはすべて、削った木の幹や枝に、動物の毛や皮、さらに鳥の羽根などを素材とした完全な手作りで、手ごろな価格のものからかなり値のはるものまで、その種類はまさに多種多様です。
下の段には、このシリーズのパート2でご紹介したココペリくんもいます。


現在の私と、どこにいても常に思い出すサウスウエストの青く澄んだ空。
ニューヨークの摩天楼同様、この美しい空もいつも私を見守ってくれています。
音楽の宝庫、アメリカサウスで様々な経験をした私が、ブルース奏法をとりいれてケルト神話にとりくんだ新作、「ダヒュ」にどうぞご期待ください(結局これが言いたかった)!


● Southern landへの想い 2 Kokopelli,my charm!
● Southern Landへの想い 1 Blue side of Shiro

2006年09月13日 | Shiro's hideaways(シロの隠れ家)