¡Feliz cumpleaños Don Atahualpa!
いまからちょうど100年前の今日、アルゼンチンのブエノスアイレス州の小さな村で、ひとりの赤ちゃんがこの世に生を受けました。
父親は南米先住民の血をひく人で、母親はスペインのバスク地方からやってきた移民の娘でした。
彼はそののち、愛するギターとともに、故郷アルゼンチン、そして南米の調べをとおして自らの哲学を謳いあげる素晴らしい芸術を完成させ、世界中の人々に深い感銘をあたえることになるのです。
今日1月31日、私たちは、'Tierra Que Anda (歩く大地)'と呼ばれた偉大なるギタリスト、歌手、詩人、作曲家、そして哲学者であったアタウアルパ・ユパンキ(1908-1992)の生誕100周年を迎えます。
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バスクの母 (アタウアルパ・ユパンキ)
もしかしたら 羊飼いの娘だった俺の母が
あの日 道を歩いてゆくのを見ていた石たちよ
おまえたちに 名はあるのだろうか
俺の母が 木陰に身をやすめた木よ
どこにゆけば おまえに会えるのだろう
もしみつかれば なんて素敵なことだろう!
祈りをささげるために!
そして 涙を流すために!
俺もいつか 歌うため
きっとバスクの地をおとずれるだろう
ああ 母よ!
はるか彼方から!
どうか俺の歌の中に もどってきておくれ!
するとあなたは 俺の身体を流れる血のなかで
まるで川の流れのように 息をするだろう
そして風が
あなたが身体をやすめた あの木を
優しく 教えてくれるだろう
もし見つかれば なんて素敵なことだろう!
祈りを捧げるために!
そして 涙を流すために!
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今日、この記念すべき日に、私が選んだ素晴らしいユパンキの詩。
私はこの詩を読んだあと、きわめて深い感動に身をつつまれ、しばらく口をきくことができませんでした。
ユパンキはきっといま天国で、愛する彼の母親とともにギターを片手に歌っていることでしょう。
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19年前の今日、私はセロコロラドの人々とともに、ユパンキの81回目の誕生日をお祝いしました。
彼はそのとき、自身のアルバム・カセットのインデックスカードにサインをしたためてくれました。
'A Shiro(シロへ)'と書くのをいきおいあまって 'A Shiron'と書いてしまい、あわてて ' n'を消したあとがあります。
また、そのとき使ったギターには、なんと(少々怪しげな)カタカナで名前をいれてくれました。
こちらは、A Shiro _ でしっかりととまっています。
こうして見るとユパンキは、まるで野球チームのロゴにでも使えそうな独特の'A'を書きました。
彼はそのとき、ずっと私のことを'二ニート(小坊主)'、もしくは'チャンギート(小僧っ子)'と呼んでいました。
1989年、1月31日。
もうすでに、あの日からこんなに時間が流れてしまったのかと思うと、なんともいえないエモーションが胸を過ります。
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そして奇しくも今日、私の新作アルバム'カミナンテ'のマスターCDができあがりました。
今回私は、19年前の1月、ユパンキがいくつか奏法の手ほどきをしてくれた彼の美しいレパートリーのなかから、'恋する鳩の踊り'を万感の思いを込めて演奏しました。
ユパンキと、そして南米の大地に捧げたこの新しいアルバムとともに、私は今日からまた、今後も彼の名に恥じない音楽を演奏してゆく決意をもって、ふたたび'カミナンテ'として道を歩んでゆく所存です。
2008年01月31日 | El Mundo Maravilloso de Las Poesias(素晴らしき詩想の世界)