ホセ・アルフレード・ヒメーネスへのオマージュ


9月22日に行う、メキシコシティー、テンプロ・マヨール"テノチティトラン神殿遺跡"公演


実は、この公演のクライマックスにおいて、メキシコの聴衆の皆さんへのビッグサプライズを予定しています。


それが、今回のコンサートの核ともいえる私のオリジナルナンバー、"テノチティトラン"から、一転してメドレー風に展開するアレンジで演奏予定の、メキシコを代表する民俗音楽である"マリアッチ"、そして"ランチェーラ"の国民的シンガーソングライター、ホセ・アルフレード・ヒメーネスの代表曲のひとつ、"エル・ヒネーテ"です。


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"エル・ヒネーテ"は、スペイン語で"騎手"や"騎兵"などを意味する言葉ですが、この場合、メキシコの"ランチェーロ(カウボーイ)"を粋に表現した言葉と解釈してよいでしょう。

恋人を亡くした誇り高きカウボーイが、夜更けに、最愛の女性を追って自らも死を決意し、ギターを片手に馬に跨り、闇の中へと去ってゆくといった内容が歌われる、ドラマティックなバラードです。


私は14歳のときに、この"エル・ヒネーテ"を、当時の私にとってまさに神様のような存在であった、盲目の天才ギタリスト兼歌手、ホセ・フェリシアーノの1969年、ロンドン・パラディアムでのライヴをおさめたLP、"フェリシアーノ・イン・パーソンVol.1"で聴き、なんて素晴らしい歌なんだろうと心をときめかせていました。

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当時私は、なぜか下級生の女の子たちにとても人気があり、よく彼女たちを前に、校庭のかたすみにあった水飲み場にこしかけ、ギターを片手に、放課後、いま思えばかなり怪しいスペイン語で歌ったりしていました。


少々スペイン風を気取って髪など伸ばし、そしてギターをかついだ学ラン姿の中学3年生が、女の子たちをゾロゾロと引き連れて学校のなかを歩いているさまは、なんともほほえましいものだったと思いますが(私はその頃、"メルヘンの王子様"にその語源を由来する"メルくん"なるニックネームで呼ばれており、それがさらに高校に進むと"サリーちゃん"になりました。大体どんな感じの少年だったかおわかりいただけると思います。)、聴く音楽はグッと渋く、ユパンキの"栗毛の馬"や、ナルシソ・イエペスの弾く"入江のざわめき"を聴いては涙し、そしてホセ・フェリシアーノの"マラゲーニャ"や、"雨のささやき"、"ハートに火をつけて"、そしてこの"エル・ヒネーテ"などを聴いては、息も出来なくなるような感動で、ほぼ毎日のように身体を打ち震わせていました。


いま私が嬉しいのは、こういった当時の思い出が、すべていまの私を支えてくれていることです。


私にとっても、思い出深いナンバーのひとつである"エル・ヒネーテ"。


さて、メキシコの皆さんにどのように受けとめられるでしょうか?


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エル・ヒネーテ~悲しき騎手  (ホセ・アルフレード・ヒメネス)


はるかなる山をたどって ひとりの男が歩いてゆく
馬の背に跨り この広い世界にたったひとり 
死を心に決めて 歩いてゆく


張り裂けそうな胸の痛みと
ずたずたになった魂とともに
そして いとしい女性とひとつになるために
彼はいま その命を終えようとしている


なによりも愛した人を
いま 永遠に失い
それゆえ 痛みを胸に 
彼は死を求め 歩いてゆく


夜の帳がおりて 
ギターを手に 男は歌う
ギターは男とともに 泣いている
星たちの 光を受けながら


こんなにも 夜は美しいのに
闇のなか 男は神に願う
"どうか私を彼女とともに あなたのもとへとおつれください"と

なによりも愛した人を いま永遠に失い
それゆえ 痛みを胸に 
彼は死を求め 歩いてゆく

♪♪♪


2009年09月04日 | Hombres Grandes,Criollos Fantasticos(大いなる人々、そして素晴らしき南米人たち)