アルゼンチン風バッハ第8番 ”カンタータ”

亡き恩師の思い出に


名女優、香川京子さんとともに行った駐日アルゼンチン大使公邸におけるコンサートは、私にきわめて大きなインスピレーションとエモーションを与えてくれました。


そしてニューヨークに戻った私は、コンサートの際、香川さんに読んでいただいたもののひとつであるユパンキの短い詩、”大地は大いなる歌”をベースに、朗読と児童合唱をフィーチュアーした、全七楽章からなるカンタータの創作に没頭。

数日前に、この新たな”アンビシャス・ピース”を完成させました。

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この作品は、純粋な私の作曲によるスコアは第三、第五、そして最終楽章のみ。

あとは、他の”アルゼンチン風バッハ”同様、私がなによりも愛するヨハン・セバスティアン・バッハの音楽を大幅に用いますが、今回は初の試みとして、自分自身でオルガン曲をギターにアレンジ。そのうえに四声からなる子どもたちの合唱をのせました。


写真の楽譜は冒頭部。


オルガン独奏による名コラール”喜び迎えん、慈しみ深きイエスよ(Sei gegrüsset, Jesu gütig )BWV768”のベーシックなギターアレンジと、それに続く合唱のパートです。

実際にはここに、私がもっとも好きなカンタータ42番”同じ安息日の夕べ”の一部を加えます。


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写真の楽譜は最終楽章の、ギターにアレンジしてイントロ部分に使う”フーガ。”
この旋律と、私の創作メロディーにユパンキの”大地は大いなる歌”をのせたものが四声で交互に展開し、クライマックスを迎える展開です。


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私は三歳から五歳になるまでを、いまも東京駒場にあるカトリックの枝光会幼稚園、そしてそのあとの六年間を、ブリティッシュ・メソディスト系プロテスタントの青山学院初等部で学びました。


いまも私のすべてを支えているのが、この九年間に受けた、キリスト教に基づく素晴らしい教育です。

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先月末、青山学院時代の最後、5年生と6年生のときのクラス担任をしてくださった樫澤保壽(やすとし)先生が逝去されました。


樫澤先生は敬虔なクリスチャンであり、そして艶のあるバリトン歌手で、いつも礼拝のときには大きな声で歌っておられました。


当時先生は、30歳になられたばかりのたいへん若い先生でした。

先生が亡くなる直前まで日本にいたにもかかわらず、わずか数日の差で告別式に出席できなかった私のために、当時のクラスメートが式の様子をこと細かに知らせてくれました。
私はニューヨークの自宅で、あたかも天から降ってくるような、ポーランド、グダニスクのカリヨン(聖堂の鐘楼)で演奏されたバッハのCDを聴きながら、先生のご冥福をお祈りしました。

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なによりもピュアーな子どもたちの声を用いた新作、アルゼンチン風バッハ”カンタータ。”


私はこの作品に、私自身の子ども時代の素晴らしい日々を投影させるとともに、タイトルの傍らに”樫澤保壽先生の思い出に”と添えようと思っています。


12月13日の月曜日、ニューヨークのイーストサイド62丁目にある「アワー・レイディー・オブ・ピース教会」において、私はこのナンバーの初リハーサルを行います。


2010年12月05日 | Knight's NY diaries(ニューヨーク日記)