天国からのメッセージ


いまから16年前、1994年の7月31日、11才でこの世を去った愛犬ペペ。


年に一度、私は彼のお墓を訪れます。


ニューヨークシティーから車で一時間半、深い林の奥に広がる静かな田園地帯にペペは眠っています。

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このペット専用墓地は、ニューヨークの中心部から少々遠いのが難点ですが、管理がとてもよく、つねにお墓はきれい。


ペペの誕生日と命日、そしてナショナル・ペットメモリアルデーと呼ばれる9月の第二日曜日には、私たちが行けない時でもかわりに記念の小さな樹木を置いてくれます。


今年ははじめて、アメリカ東海岸が美しい紅葉で覆われはじめる、ハロウィーンを数日後に控えた10月半ばにここを訪れました。

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いつもここにいっしょにやって来るのが、現在の愛犬プッチーです。


プッチーは広大なグリーンの上を走り回り、ペペのお墓のまわりで遊びます。


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プッチーはまだ子犬のように見えますが、実はもう今年11才。16年前、ペペが神様のもとへと召されたときの年齢になりました。


プッチーとペペは、よく似たポメラニアン種。

つい先頃、プッチーが無事ペペが生きた年数を越えたので、なんとなく私はホッとしていたところでした。

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と、いままで走り回っていたプッチーが、急に何かに呼ばれたかのようにペペのお墓の前に立ち止まり、一点をじっと見つめているのに気がつきました。


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それはふだんあまり目にしない光景だったので、カメラを向けてみました。

すると...。


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彼はそのときぺぺの墓標の傍らで、私の目にはまったく見えなかった、空からやわらかに降ってくる不思議な光をじっと見つめていたのです。


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やがてプッチーはこのように'おすわり'すると、しばらくこのままじっと動かずにしていました。

それはまるで、誰かと対話をしているように見えました。

この光は、このときもちろん私の目には見えていません。


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やがて、あたかも天国と地上に距離をおいて佇んでいるかのような、ちいさな二匹のワンコ同士の'対話'は、さらに静かな'祈り'に変ったように感じられ、光は次第に天にむかって消えてゆきます。


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私は'やんちゃ坊主'のプッチーが、こんな表情で外でじっとしているのをいままで見たことがありません。


もちろん、"こういった現象は、単に太陽の光をカメラのレンズがとらえて偶然おきるだけもの"とおっしゃる方もいるでしょう。

しかし動物には、人間が見ることのできない霊を見る能力があるという話を聞いたことがあります。

このときのプッチーは、あきらかにふだんと違う、なにか特別な気配を感じているようにしか見えませんでした。


アメリカの10月はハロウィーンの月。


クレイジーなホラー映画やパレードのせいで本来の厳かなイメージが薄れつつありますが、ハロウィーンとは、敬虔なカトリック教徒の間で祝われる諸聖人の日(万聖節)の前夜、10月31日に、死者の霊が現世の身内のもとに帰ってくるという言い伝えから、よい霊を迎え悪霊を追い払う、いわば日本のお盆に相当する、もともと古代ケルトに起源をもつ行事のひとつです。


プッチーが、天国から降りてきたペペの声を聞いたとしてもまったく不思議はないでしょう。

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"プッチー君、ぼくのかわりにもっともっと長生きするんだよ。"


"うん、これからもぼくを守ってね。ときどきここにペペ君に会いに来るからね。"

プッチーとペペは、もしかしたらそんな話をしていたのかもしれません。

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当ホームページを開いていただいたとき、最初に聞こえてくるギターの調べが、私が1994年にペペのために作曲したギターソロ、「ペペのサンバ」です。

私はしばらくコンサートで弾いていなかったこのナンバーを、11月16日の東京アルゼンチン大使館におけるコンサートで演奏するために、ちょうど練習をはじめていたところでした。


2010年10月16日 | Knight's NY diaries(ニューヨーク日記)