9.24 NY公演にむけて Part 5
南米の人々を魅了する日本人フォルクローレ・ギタリスト、大竹史朗(シロ・エル・アリエーロ)が、今月24日(土)、ニューヨークでソロ公演を行う。‘シロ・エル・アリエーロ’といえば、フォルクローレ・ギターの巨匠アタワルパ・ユパンキ(1908ー92)の遺志を継ぐギタリストとして、南米はもちろん、ニューヨークのラテン系コミュニティーで相当な知名度を誇る。今回の公演では、最新CD‘マリア・ルイサ’から日本語の曲も披露する予定だ。
“フォルクローレはアルゼンチンの山村で暮らす人々の音楽。そうした土臭さという面では、地元のフォルクローレ・ギタリストにはかないません”と東京育ちの大竹は言う。“これから僕が創りたいのは、フォルクローレをベースにした融合音楽です”。
大竹はこの‘融合’にこだわりを持っている。“異なる音楽が融合して新しい音楽が生まれる根底には、それぞれが培ってきた歴史があると思うからです”。
94年から10年間というもの、フォルクローレ音楽を深めるために様々なラテン系のコンサートに出演し、ラテン系のミュージシャンと共演してきた。
人は見かけによらないよいうが、大竹は、繊細でどこか物悲しげな容姿とその音楽からは想像もつかない、たくましい生活力の持ち主。ギターで生活できるようになるまでは、ラテン系レストランで無料演奏しながら、“トラックの運転手もしたし、ラーメン屋で餃子も作ってました”と話す。こおうした経験が無駄ではなかったと信じる。
13歳でユパンキのギターにショックを受け、クラシックギターの基礎も究め、演奏技術はかなりのレベルに達していたが、日本にいるころは音楽で身を立てようとは夢にも思っていなかった。
そのうちあるきっかけを得て88年にニューヨークへ。当時、クイーンズでラテン系の家族の家に下宿していた。“裏庭にギターがあったので弾き出したら、大屋さんが血相を変えて飛んできて、“お前のギターはユパンキの音だ”って言うんです。大屋がアルゼンチン人であることも知らなかった大竹もこれにはびっくり。その大屋の計らいで、89年にアルゼンチンのユパンキの自宅に招かれ、師弟関係が始まった。“運命かな、と思いました”。
ラテン名、‘エル・アリエーロ’はスペイン語で‘牛追い’という意味。ユパンキの代表作のタイトルでもある。94年、アルゼンチンに彼の墓参りに行ったときに、“墓前で彼が ー 牛追いにように弾け- と言ったのが聞こえたような気がした”という。
24日のコンサートでは、師ユパンキを今に蘇らせながら、大竹史朗の新しい音楽を聴かせてくれるはずだ。アコースティックギターが好きな人は、ぜひ聴きに行ってほしい。
2005年09月17日 | Reviews(新聞雑誌インタビューetc.etc...)