レム最後の神話的長編「大失敗」、日本語訳出版に
SF傑作「ソラリス」の著者として、そしてまた「クラクフの賢人」との異名で知られたポーランドの大作家、スタニスワフ・レムの壮大なスケールの長編小説“大失敗-Fiasko”が、日本でとても親しくさせていただいている久山宏一先生の翻訳により、東京の国書刊行会から出版になりました。。
この「大失敗」、ヨーロッパではすでに、英、仏、伊、独、西、露をはじめとする13カ国語によって翻訳出版されていますが、今回、ヨーロッパ以外の言語で翻訳されるのはこれがはじめてであり、この久山先生の功績は、我々日本人にとっても誇らしい快挙といえるでしょう。
実ははずかしながら私も、この本の翻訳段階でほんのちょっとだけお手伝いさせていただきました。
ぜひ多くの皆様に読んでいただきたいと思います。
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久山先生がニューヨークに送ってくださった、シンプルでシャープなデザインの「大失敗」。
これから読むのが楽しみです。
私がお手伝いしたのは、第二章に登場するいくつかのスペイン語名称の読み方ですが、それはほんとうに数少ないもので、決して特筆に値するようなことではありません。
しかし久山先生は本文最後のページで、私に対する感謝の意を表してくださったのです。
先生のお人柄がおわかりいただけることでしょう。
素晴らしい本の出版に際して、ほんのすこしでもお役にたてたことをとても嬉しく思っています。
Un saludo del Gran Bailaor !
ユパンキのサインのはいったギター同様、私にとってとても大切な宝物が、スペインが生んだ世紀のフラメンコ舞踊家、故アントニオ・ガデスが言葉をいれてくれたギターです。
これは私が少年時代はじめて手にした、日本の名ギター製作家、故中出阪蔵さん1978年製作の楽器で、私はこの楽器とともに成長しました。ガデスはその私の恋人ともいえるギターに、“コンパニェーロ(仲間、同志)よりシロへ”と、私が彼女(ギターはスペイン語では女性)をかかえたときにちょうどはっきりと見えるように書いてくれたのです。
スペインのバイラオールたちの踊りと、ほかの国のフラメンコ舞踊家の踊りの違いは単なる技術面の問題ではなく、なんといっても目のもつ光でしょう。そのなかにおいてもアントニオ・ガデスの踊りはまさに別格でした。彼は、その暗い光に満ちた目の輝きが生むワイルダネスと、上品で洗練されたエレガンスを同時にかねそなえた、きわめて数少ない天性の踊り手だったのです。
私は彼の踊りを見て、ほんとうに圧倒されたものです。
このギター、多くの中出ギターがそうであるように、生まれてからもう30年近く経つのにもかかわらず、その音色は年々さらに艶やかさを増すようです。 ただ、私が演奏するフォルクローレにはあまりに音がエレガントすぎるところがあって、実はもう演奏には使っておらず東京に置いてあるのですが、今年の3月27日、私にとってたいへん縁のふかい広島市の国際ホテルにおいて、新しく創立される広島スペイン協会の創立の式典にご招待を受けており、3曲ほど披露する予定でいます。
サウンド・ホールのなかには、“大竹史朗氏の為に之を製作”と中出さんがしっかりと書いてくださっているこのギター。
東京のスペイン大使館や、各地から来賓のみなさんがお祝いにかけつけるこのイヴェント、もしかしたら私は彼女とともに広島を訪れるかもしれません.。
Gracias, Don Antonio !!!
Gracias, Don Nakade !!!
このように見ると、少々へんなところに書いたなという感じですが、そこはさすがアントニオ・ガデス。
ギターが演奏者に身を委ね横たわったとき、どの部分がもっともよく目に映るのかを知っていました。