魂のフォルクロリスタ、エドワルド・マルティネス・グワジャーネス (追記)

エドワルドの実兄のルイスもまた、ユパンキを驚愕させたというギターの名手でした。
ユパンキの名著 ‘風の歌-El Canto del Viento' の第十章、‘セロ・コロラドの神秘’ でも、当時8歳のルイスのことが、‘ルイス・マルティネス、驚くべき小僧っ子!’と写真入りで紹介されています。
彼は演奏するときだけは‘ルイス・デル・セーロ’ と名乗っていましたが、プロにはならずに一生精肉業者としてセロ・コロラドで暮し、ワインを片手にギターを弾いた典型的なクリオージョ(地方のいきなアルゼンチン男)でした。
ルイスの弾くチャカレラをまじかで聴いたときは本当に吹っ飛ばされそうでしたが、彼もまた10年前に、エドワルドと同様、ガンで他界してしまいました。
いま彼らが生きていたらどんなによいかと思います。本当に残念でなりません。


ユパンキの‘風の歌’と、本文で紹介されている8歳のルイス・マルティネス

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2005年06月29日 | Hombres Grandes,Criollos Fantasticos

北陸加賀で生まれたダブルネックギターソロ ‘ レジェンダー伝説 ’

ニューヨーク風ヴィラ=ロボス第4番


こちらでのコンサートの際、欠かせないレパートリーのひとつにオリジナルギターソロの‘レジェンダ-伝説’ があります。
ダブルネックギターの12弦と6弦を交互に弾きながら、ラストでは特殊奏法を用いて両方いっぺんに弾いてみせるこのナンバーは、たいへんトリッキーで視覚的効果が高いため、時には主催者から“レジェンダをプログラムにいれてください”と依頼されるほど万人むけのナンバーといえます。
石川県の加賀市での公演の際に訪れた、加佐(かさ)の岬という美しい日本海の風景に、かの地に伝わる不思議な民話の雰囲気をからめて作った曲ですが、ヨーロッパでもアメリカでも中南米でも、コンサートプログラムには(民話の内容まで)かなり細かく解説されているのにもかかわらず、一切‘加賀’という言葉がでてきません。いったいそれは何故でしょうか?

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2005年06月28日 | Concert Memorabilia

偉大なる詩人、レオポルド・ルゴーネス

今月13日は、アルゼンチンが生んだ素晴らしい詩人、レオポルド・ルゴーネス(Leopoldo Lugones 1874-1938)の生誕記念日でした。
ルゴーネスの故郷のコルドバ州リオ・セコで、毎年彼を記念して行われるフォルクローレフェスティヴァル‘カント・イ・ポエシーア’祭への2回の招演は、コスキン祭同様、アルゼンチンフォルクローレのエネルギーを体感し、吸収することのできた最高の経験になりました。

写真はブエノスアイレスの古本屋を探し回って見つけた、ルゴーネスの詩集‘リオ・セコのロマンス’

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2005年06月27日 | Hombres Grandes,Criollos Fantasticos

心の糧、フェンシング

タイトな演奏旅行などに備え、いつも健康でいられるように続けているのがフェンシングです。
一時間もやっていると、もう水をかぶったように汗だくになりますが、これによって鍛えられるのは肉体面だけではありません。
ニューヨークなどというところは、宗教や考え方の違う人々がごちゃごちゃに交じり合って暮らしているジャングルのようなところなので、以前はちょっとしたことでアップセットすることがしばしばでしたが、フェンシングのおかげでだいぶ精神面においても鍛えられ、あまりいろいろなことに動じなくなりました。素晴らしいスポーツだと思っています。

アメリカでは、フェンシング人口が実に18、000人足らずということでかなりマイナーなスポーツといえますが、私はこれがきっかけでいろいろな歴史の本なども読むようになり、過去に実在した、素晴らしい考え方を持った人たちについても学ぶことができました。
過去から学び、そして未来を見る。
いまの私の生活の半分くらいをしめているのがこのフェンシングです。

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2005年06月25日 | Shiro's hideaways

魂のフォルクロリスタ、エドワルド・マルティネス・グワジャーネス

私の大親友であり、人生の大恩人であったエドワルド・マルティネス・グワジャーネス(本名ラモン・エドワルド・マルティネス)。
アルゼンチン、コルドバ州のセロ・コロラドの出身で、ユパンキの名曲に歌われた‘ギジェルマおばさん’を実の祖母に持ったこのフォルクローレ歌手とのニューヨークでの出会いによって、私はユパンキのフォローアーとしての道のりを歩むことになりました。
南米大陸を吹き抜ける風のような詩情に溢れた彼のギターと歌声は、私がどんなにがんばっても真似のできない深い味わいがあり、 私はいつか、エドワルドとのコンサートが日本でできることを願っていましたが、1998年、彼は42歳の若さで、ガンのためにこの世を去ってしまいました。今年は日本的に言えば彼の七回忌にあたります。
私はエドワルドが生前私にしてくれたことに心から感謝するとともに、きっとユパンキと一緒にギターを弾いているであろう天国から、これからも私の長い道のりを見守ってくれるよう祈るのです。

エドワルド・マルティネス・グワジャーネス(1956ー1998)

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2005年06月22日 | Hombres Grandes,Criollos Fantasticos

究極の素敵な贈物 、ウエストサイドケーキ

私は映画 ‘ウエストサイド物語’ の大ファンです。

この不滅のミュージカルの金字塔に強い影響を受け、当時ダンスに没頭していた私は1988年、(ベルナルド役を演じた)ジョージ・チャキリスが、長い下積みのあと、ニューヨークで('ウエストサイド'をバーンスタインらとともにクリエイトした)ジェローム・ロビンスに会うことによって成功のきっかけを作ったというエピソードだけを胸に、"ニューヨークに行けば会うべき人に会える"と自分自身に言い聞かせながら、誰ひとりあてもない土地へと単身乗り込んだのでした。

写真は、あるファンの女性が作ってくださった特製‘ウエストサイド’ケーキです。
食べないで、ずっと冷凍しておこうかなどなどいろいろ考えましたが、結局彼女の意向もあり、涙をのんで食べました。
ウエストサイドよ永遠に!!!

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2005年06月22日 | Mis tesoros preciosos

映画 ‘男はつらいよ’ と銘器 ‘中出ギター’

日本の皆様によく聞かれることのひとつに、“私がかつて、寅さん(松竹映画)に出演してギターを弾いたというのは本当ですか?” という質問がありますが、この場をお借りしてお答えしますと、“本当”です。

1985年に製作された、‘男はつらいよ-柴又より愛をこめて’ がそれで、私は劇中、マドンナ役の栗原小巻さん(小学校の先生の設定)の元教え子の青年役として、先生の好きな、‘七つの子’ をギターで演奏しています。
寅さんの映画はギターやマンドリンのBGMが実に多いため、知らないでご覧になると、私こと若い俳優がギターを弾く演技をした後で、専門の奏者がアフレコで音をかぶせたように見えますが、これは実際、私自身がギター独奏用にアレンジを行って演奏したものを、そのままサウンドトラックとして使っているのです。
ですから、昨今ニュース番組などに出演してギターを弾くことはよくあっても、現存する劇映画のなかで私がギターを演奏しているものとなると、これがワン・アンド・オンリーということになりますね。

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2005年06月11日 | Shiro On Air