私は幼い頃、母の歌う“ブラームスの子守歌”を聴いて育ちました。
それでかどうかわかりませんが、いまでもブラームスは大好きな作曲家のひとりです。
あの「チェロ・ソナタ第一番作品38」などは、何度聴いてもその感激が薄れることはありませんし、そもそもオリジナルのギター曲を作り出したきっかけも、ブラームスの6つの小品作品118の第二番、「間奏曲イ長調」のようなナンバーをギターで弾きたかったことではじまりました。
また、第二弦楽六重奏曲になどは、心から愛しているにもかかわらず、別れを告げなければならない女性、アガーテ・フォン・ジーボルトに捧げられたとして、その第一楽章(第162-8小節)で、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンは、a-g-a-d-h-eの音を奏して、アガーテの名を三度も呼び起こしているのです。
なんとロマンティックな!!!
写真)ヨハネス・ブラームス(1833-1897)
二十歳のブラームスと、アガーテ・フォン・ジーボルト
ヴァイオリンが「アガーテ」の名を呼ぶことを書いた、1952年、カール・ガイリンガー著、山根銀二役による音楽之友社刊の「ブラームス-生涯と作品」のページ。
この本を読んでいると、19世紀のヨーロッパにタイムスリップして、ブラームスに会っているような錯覚をおこす、母からのプレゼントで私の宝物です。
しかしうまい具合に名前が音名表記できる女性を好きになったものですネ!
さすが芸術家のなかの芸術家は、女性の名前にも音楽的な響きを感じて魅かれるのでしょうか?
「よし、ぼくもひとつやってみるか!」とばかりに、ある女性の名前を思いついたところがなんと、「ダメだ、名前にひとつも音名がない!」
結局、私のような凡人の行き着く先はそんなところです。
やはり大切にしているチェロ・ソナタと、ピアノ小曲集のCD。
iPodのおかげで本当に持ち運びが楽になりました。