完璧の極致に高められたギター
私にとってかけがえのないギターの恩師である鈴木巌先生が、毎年いつもニューヨークまで送ってくださる年賀状とともに、昨年大成功をおさめた、先生のドイツでの公演の模様を報じた現地紙掲載の記事を送ってくださいました。
鈴木先生は昨夏、先生ご自身が長年にわたって愛器として使用なさった、ドイツの名ギター製作家一族のハウザー主催の第35回国際ギターセミナーにご招待を受け、現地にて講座、そしてリサイタルを行われました。
この新聞記事は、ランダウ市での先生のコンサートを評した素晴らしい記事です。
本当はすべてご紹介したいのですけれど、何しろ大きな記事なので、特に私が素晴らしいと思うところを抜粋してご紹介したいと思います。
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彼(鈴木先生)の奏法のこの気高く、内容豊かな技量、純粋で輝かしい滑らかさ、非の打ち所のない演奏技術の冴え、そしてほとばしる音楽的表現で、ギターは完璧の極致まで高揚した。
鈴木巌は弦を響き渡らせ、ひとつの音、またひとつの音、さらにまた音を次々と宙に放ち、そしてひとつの和音を響かせる、
―鈴木は決して猛烈に弾きまくるタイプの演奏家ではない。
彼は各音色のなかに古典作品の真髄を響かせることのできる演奏家なのであった。
思慮深さと経験豊かさ、そして円熟した表現によって、聴衆を魅了することができたのである。
鈴木は最高水準のギター音楽を示した。
エイトル・ヴィラ=ロボスの5つの前奏曲では、名ギタリストは繊細さ、情緒豊かさ、そして哀愁を湧き上がらせる。
この著名な作曲家エイトル・ヴィラ=ロボスはロマン派や印象派や新古典主義、さらにはブラジル歌謡といったものまでバロック様式と結びつけた。
濃厚な響き、旋律的効果や表現、詩的色合いや軽やかさ、それでいて物凄い活力といったもも、この5つの前奏曲は発揮している。
自分の楽器を超然と使いこなす人だけが、それを引き出すことができるのだ。
この鈴木巌のように。
(アンドレア・シュバルツマイヤー 2007年8月9日 木曜日 Ostenhofen紙)
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鈴木先生のギターの音色はほんとうに素晴らしいものです。
私が子どもの頃、NHKテレビのギター講座でギターを指導していらっしゃる先生を見て、”ぜったいにこの人にギターを習いたい”と思ったのは、その’ギターの音色の深さ’からでした。
この記事を書いたドイツのシュバルツマイヤーさんは、先生のギターを聴いてすぐそう感じたに違いありません。
私の4年ぶりの新作アルバム、’カミナンテ’は、ユパンキとヴィラ=ロボスという、私にとっての最大の存在である南米のふたりのクリエイターの作品が主軸となるものです。
この時期において、このシュバルツマイヤーさんの素晴らしいヴィラ=ロボス感、また鈴木先生のドイツでの素晴らしいご活躍を知ることができたのは、決して偶然ではないでしょう。
私がいま、道はちがえども同じギターの演奏家として活動することができているのは、本当に鈴木先生のおかげです。
私はこの素晴らしい恩師に決して負けないよう、’守破離’の心をもって、ひとりの南米音楽の弾き手としてヴィラ=ロボスの研鑽を今後も続けてゆきたいと思っています。
“先生、負けませんよ!!!”