***
11月~12月の日本での、すべての公演においてオープニング・ナンバーとしてプレイする曲をご紹介したい。
傑作ミニ・オペラ「ブエノスアイレスのマリア」のクリエイター、オラシオ・フェレールが詩を書き、ピアソラが曲を担当、そして名歌手、アメリータ・バルタルが素晴らしい名唱による録音を残した「ブエノスアイレスの雨傘」を、バッハの名曲「サラバンド(BWV.997)」に融合アレンジを試みたオリジナル・ギターソロ。
ピアソラは、その音楽に対する、一切の妥協を許さない姿勢や、きわめて先を進んでいた斬新な発想によって、72年の生涯のほとんどの歳月を、保守派や無理解者との闘いに明け暮れなければならなかったミュージシャンだ。
同じような状況によって、現在のドイツ国内を、生涯にわたって転々とせざるを得なかったバッハと、まさに同じような人生を歩んだ人と言ってよいだろう。
これは、そんな20世紀最高の音楽革新者のひとりへの、僕からのささやかなオマージュ。
ふたつの、まったく異なる時代に作られた音楽を一つに編曲し、効果的なイントロ、アウトロ、そしてトランジッションを付け足したしたものだが、おそらくどちらも知らないで聴くと、どこがピアソラで、どこがバッハなのか全くお分かりにならないと思う。
このふたつの作品は、僕にとって全く同じエモーションを持つものだ。
”・・・空には雨が生まれる岸辺があって、そこは晴れている。しかしその場所に行き着くには、荒々しい空の道をたどり、あまりに多くの雨を浴びるので、あなたもあたしもからだがとけてしまう。でも、そうすれば、あたしとあなたは永遠にひとつに結ばれるはず・・・”
と、泣かせるオラシオ・フェレールの詩も圧巻だ。
僕の訳はあまり良くないが、ビデオには、スペイン語による原詩と、日本語字幕をつけてある。
そして、アメリータ・バルタルの、ねっとりとした情感を湛えた声。
僕は今でも、一番好きな女性シンガーはと問われたら。迷うことなく彼女の名前を口に出すだろう。
このギターソロは、アメリータ・バルタルの声を、ギターで模倣して表現している。
HOPE U NJOY!!!