‘Guitarra Dímelo Tú’ de Atahualpa Yupanqui ユパンキ不滅の名曲「ギターよ、教えておくれ」

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アルゼンチン日本国交樹立125年を記念する、今秋11月26日の東京公演は、僕にとってはじめてアストル・ピアソラの名前を前面に出すものになるが、もちろんユパンキの作品を全く演奏しないわけではない。

人間と楽器がひとつとなって、”お互いの言葉で対話する”ような作風の「ギターよ、教えておくれ」は、当日のレパートリーのひとつ。

ギターの無限の機能性、そして音色の美しさを知り尽くしていたユパンキならではの、まさにギター音楽の極致と言ってよい作品だろう。

青年時代、反政府活動メンバーとしてゲリラ活動を行っていたユパンキは、ある日、信頼していた同胞に裏切られ、投獄される。

獄中の暗がりのなか、ほのかな人間不信に陥ったユパンキが、自身の分身であるギターに静かに問いかけた心のうちが、そのまま音楽となったのが、この作品だ。

ビデオには、歌詞の対訳日本語字幕を入れてある。

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中学生の時、「中南米音楽」という、たいへんクオリティーの高い雑誌に、この「ギターよ、教えておくれ」の楽譜が掲載されているという話をどこかで聞き、慌てて書店に走ったことがあるが、見るとその楽譜は、キーは間違いないものの、決して100パーセント正しいものではなく、僕自身がレコードから「耳コピー(採譜)」したもののほうが、より正確だったことをよく覚えている。

ただし、そういった楽曲の楽譜が雑誌に掲載されること自体、今では考えられないことで、当時の日本の音楽文化の高さがよく理解できる。

僕は、本当に良い時代に生まれ育ち、そして良い音楽に出会えたことを感謝している。

ビデオの撮影および演出は、日本を代表するドキュメンタリー映像作家・羽田澄子さん。