’ユパンキ記念’NYアルゼンチン総領事館公演 全歌詞日本語訳

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南米フォルクローレの最高峰、アタウアルパ・ユパンキの没後20年を記念して行われるスペシャルコンサートが、二日後に迫りました。
★なお、この公演は既に予約で超満員となり、総領事館のオンライン予約ページもクローズとなりました。当日はかなりの混雑が予想されます。ご予約なさった方は、なるべく早く現地にお越しください。★
この公演では、私のごあいさつはすべてスペイン語と英語で行うため、ニューヨーク在留邦人の皆様に、ユパンキの素晴らしい歌詞について日本語でご説明できません。
そこで、ホームページ上に、当夜のレパートリーすべての日本語対訳を記載することにしました。
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プログラムは全7曲。
2曲めと3曲めに私のオリジナル・ギターソロ(ラ・サンティアゲーニャ、風が歌う地~ユパンキに捧ぐ)を演奏する以外は、すべてユパンキの代表的作品のオンパレードとなります。

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写真は、第4曲めに演奏予定の傑作サンバ、’トゥクマンの郷愁’に歌われる美しい二つの花、アマンカイ(写真上)と、アサール(写真下)です。


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1.栗毛の馬 (詩/アタウアルパ・ユパンキ 訳/大竹史朗)
それはまるで 炎の帯(おび)のようだった
ガロパンド! ガロパンド!
逆巻くような その鬣(たてがみ)
俺の栗毛よ! お前を呼んでいる
月の山陰を走り 雪の谷間を渡った
ともに歩いた いくつもの道
俺の栗毛よ! お前を呼んでいる
   *あの夜 黒い霧の投げ縄が お前の足に絡みつき
   お前は 崖の底へ落ちていった
   どうして気がつかなかったのか?
   星を見つめていたのか?
   深い谷底に お前を呼ぶ声が消えてゆく
   ああ ひとりで死んでゆくお前
   俺の栗毛! 俺の馬よ!*
ひとり残された タラの木の飼い葉桶
いななき声の聞こえなくなってしまった囲い場
俺の栗毛よ! お前を呼んでいる
しかし誰かがいう 天はよき馬の暮らすところと
それならきっと お前もそこにいることだろう
ガロパンド! ガロパンド!
* (くりかえし)
ガロパンド・・・馬の駆け足(ギャロップ)
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4.トゥクマンの郷愁 (詩/アタウアルパ・ユパンキ 訳/大竹史朗)
トゥクマンの夜 タフィーの谷を照らす月
ああ 俺の山よ! 俺は望郷の思いを募らせる
アルパ、ボンボ、そしてヴァイオリンの調べ
さあはじまる サンバの踊り
思い出と希望が ああ パニュエロにゆれている
   *かけがえのない仲間たち そしてギターの調べ
   俺は命ある限り トゥクマンへの思いを募らせる
   このサンバの響きとともに!*
 
青く輝く山脈 アサールの花の香り
五月に香るオレンジ そしてアマンカイの花
トゥクマンの夜 タフィーの谷を照らす月
ああ 俺の山よ! 俺は望郷の思いを募らせる
* (くりかえし)
トゥクマン・・・アルゼンチン北部の美しい州。ユパンキは青年時代をかの地で過した。タフィーは地名。
アルパ、ボンボ・・・小型ハープ、太鼓
パニュエロ・・・ハンカチのこと。トゥクマンを代表するフォルクローレのリズム、サンバ(よく知られるブラジルのそれとは異なる)は、ガウチョ装束に着飾った男女が対になり、ハンカチをかざして優雅に踊られる。
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5.牛車にゆられて (詩/ロミルド・リッソ 訳/大竹史朗)
荷車の車軸に油をささないからって 俺は’アバンドナーオ’だと言われる
いいじゃないか 俺はこのギーギーきしむ音が好きなんだ
ぜったい油なんかささないよ
あまりに退屈な毎日だ 
轍(わだち)を辿ってはまた辿る とてつもなく長い道
こいつは俺に なにもよこしちゃくれない
静けさなんかいらないね
考えることなどないからさ
そりゃ少しはものを考えたこともあったけど それも遠い昔の話
いまはもう 考えることなどなにもない
俺の荷車の車軸よ
ぜったい油なんかささないぞ!
★アバンドナーオ・・・これは、英語の’アバンダンド(放棄された)’に相当する、とても訳が難しい言葉で、この場合、やる気のないやつ、魂のぬけてるやつ、物事を投げてるやつ、または怠け者などの意味となる。スペイン語で正しくは’アバンドナード’と綴られるが、労働者たちの独特の訛りによって、こう発音される。
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6.トゥクマンの月 (詩/アタウアルパ・ユパンキ 訳/大竹史朗)
俺が月に歌うのは
ただ照らしてくれるからじゃないよ
俺が月に歌うのは
彼女が俺の歩いてきた道 すべてご存知だから
ああ トゥクマンのお月さん
カルチャキ族の太鼓が鳴れば
タフィーの小道をガウチョが誘う
   *霧にあたりを覆われてしまえば 
   人生などどこへやら さきのことなど誰が知るだろう
   だけど霧もそのうち晴れるもの 
   そうしたらまた歌うとしよう
   ああ 俺の愛するトゥクマンよ!
   霧が晴れたらまた歌おう
ときには心躍らせて ときには心傷ついて
俺がアチェラルの野を訪れると
ああ すてきなお月さん!
あんたはいつも 桑畑にくちずけていた
俺は歌いながら歩いてゆく
これが俺流の世の照らし方ならば
俺とあんたは どこか似ているね
孤独なお月さん
* (くりかえし)
カルチャキ族・・・トゥクマンの先住民族
アチェラル・・・地名
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7.牛追い (詩/アタウアルパ・ユパンキ 訳/大竹史朗)
つむじ風が砂地を舞い、陽の光が砂利道に遊ぶ
道の魔法にとらわれて 牛追いが行く
風にむかうポンチョは 霧に翻る旗
空っ風の笛の音がそれを迎える
あの山路こえて はるかな道を 牛追いが行く
   *やるせなさと牛の群れが 同じ道を進んでゆく
   やるせなさだけが俺たちのもので
   牛の群れは他人様のもの
太陽は 鋭い山並みでその身を削って夕べを告げ
荒れ野の光も眠りに落ちた 
群れは進む ”はいどう!はいどう!”
牛追いが行く 牛追いが行く
ああ夜よ 思いでつれてきて
この寂しさ 少しでもやわらげておくれ
道の魔法にとらわれて 牛追いが行く
* (くりかえし)
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ユパンキの詩の日本語訳はかんたんなものではなく、決して私の訳がベストとは思いませんが、私はつねに、こういったフィーリングで歌唱を行っているとご解釈ください。