アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 XII
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ギター(アタウアルパ・ユパンキ)
みっつのソプラノと 語り口をもつ
私のギター
激しいむせび泣きと いくつかの喜びを歌う
私のギター
ギターは 野へと赴いた
そこでなにを見つけようとしていたのかは わからない
ため息をついては 通り過ぎてゆく風景を
思い起こそうとしていたのか
ギターは 海へと赴いた
浜辺でなにを感じたのかは わからない
別れを告げるということを おぼえたのだろうか
そこには 誰も去ってゆくものなど いないというのに
ギターは インディオたちのもとへと赴いた
その 神秘の謎を知るために
そして そのからだを静けさでいっぱいに満たされて
より深さをまして 里(さと)へと戻ってきた
ギターは 貧しいものたちのもとへと赴いた
彼らと たくさんのことを語った
そして 悲しみと恐れに そのからだをいっぱいに満たされて
泣きながら 私の腕のなかへと戻ってきた
そして ギターは歌と出会う
それは (彼女が)ずっと待ち続けていたものだった
そのときから ふたつは ともに世を渡る仲となる...
歩みをつねに ともにしながら!
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ギターという楽器に対する考え方が、本質的に変ってしまうようなユパンキの詩。
私はこの詩をとおして、あらためてギターという素晴らしい楽器に対するエモーションを深め、大切な、10月4日のニューヨーク公演に臨みたいと思っています。
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トップ写真のギターは、アルゼンチンのコルドバ州北部、ビジャ・デ・マリーア・デル・リオ・セコに暮す名ギター製作家、グレゴリオ・カブラル氏による手工カスタムギター、’コンドルビウエラII’です。
南米の広大な土地に生まれた名工の魂が込められた、クリオージョ(ラテンアメリカ人)たちの情熱と静けさを知るこの’完全’なギターは、アルゼンチン産の’ノガル(胡桃)’によってその身を飾り、1995年、1月21日にこの世に生を受けました。
私はこれまで、中南米で行ったすべてのコンサートにおいて、このギターを使用してきました。
金属によるパーツを一切使用しない、木材のみが生み出す深くナチュラルな音色。
南米の光と影、そして香りを、私のもとにいつも風のように運んでくれる、この世界にたったひとつのギターの調べです。