アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 XVI
来る2月4日、スペシャルゲストとして二年連続で招待を受ける運びとなった、ニューヨーク市のオフィシャル・イヴェント”ブラック・マンス・ヒストリー”の一環として行われる、NYハウジングオーソリティー室内楽アンサンブルによるカーネギーホール公演。
私は昨年と同じく、コンサートの第一部を締めくくる重要な役目を受けていますが、今回のパフォーマンスのオープニングとしてまず考えているのが、ユパンキによって綴られた、無限の深みをもつ一片の短い詩の、私自身による朗読です。
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大地は大いなる歌
芽を吹いては茂る 牧草のような歌
そっと耳をかたむけてごらん
きっと彼女*はそれを語ってくれるだろう
(* 大地‐ティエラ‐は女性名詞)
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これは、ユパンキの傑作詩集”ギターラ”の冒頭部分に、特にタイトルをもたず、本章への導入文として記された作品です。
私はまず、この詩をオリジナルのスペイン語で詠みあげたあと、今回演奏の”アルゼンチン風バッハ”の前半部、バッハの’プレリュードBWV996’を弾きはじめる予定です。
これまで私は、たとえどんな国のどんな演奏会場にあっても、自分がユパンキの遺志を継ぐものであるとか、後継者のひとりであるなどとは一度も考えたことはありません。
しかし今回、カーネギーのステージで、生前ユパンキがなによりも愛した、そしてまた、かのヴィラ=ロボスをして「世界をひとつに結ぶ最高の民俗音楽」と言わしめたバッハの音楽を、ニューヨークの聴衆を前にこのようなかたちで弾くということは、たぶん私にとって、”敬愛してやまない南米の巨匠たちの遺志”というものを少なからず意識する、おそらく最初のパフォーマンスになるのではないかと思っています。
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(写真 カリフォルニア州ヨセミテ国立公園 /撮影 by SHIRO)