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来る3月17日金曜日、東京オペラシティ・リサイタルホールで行うコンサートのクライマックスは、「ガルシア・ロルカに捧げるバラーダ」とタイトルした、日本舞踊を基調としたモダンダンスと朗誦を伴う全四楽章組曲。
このビデオは、そのオープニングを飾る、ロルカの傑作戯曲「血の婚礼」第三幕第一場で、人間の姿とともに登場する’月’の(婚礼の日に、かつての恋人とともに馬で逃げ去った花嫁に対する)、僕が心から心酔する幻想的な独白シーンに霊感を受けたギターソロのイメージビデオ。
月といえば、”ただ光り輝くからっていうことで俺はあんたに歌うんじゃない 俺はあんたが、俺の歩いた道のりすべてご存じだからあんたに歌うんだ”と、歌ったユパンキの「トゥクマンの月」も素晴らしいが、この、スペインの国民詩人が、神秘的に、そしてエロティックに月を擬人化したモノローグは、夜、何気なく見上げる月に対する感覚が、根本的に変わってしまうような、まさに圧巻といえるだろう。
このギターソロは、そのあたりの感じをよく出せたのではと、とても気に入っているもの。
ビデオには、日本語字幕を入れてわかりやすくしてある。
なお、当ビデオで使用した絵画は、他の一連のロルカ・ビデオで使用している、僕の大変好きな画家、フリオ・ロメロ・デ・トーレスによる、「ラ・コプラ(民謡)」と、「カンテホンド(深い歌)」と呼ばれる作品。
特に、ビデオのラストで全景を見ることのできる「カンテホンド」は、アンダルシアという土地の霊と因襲がもたらす宿命的な業に苦悩しながらも、ほかならぬその苦悩によって浄化されている女性たちの姿が、一枚の絵画に集約された傑作だと思っている。
使用ギターは、現在、クロサワ楽器日本総本店クラシックギターフロアとのご縁で使用させていただいている、スペインのホアン・エルナンデス(コンシエルトS)。
ボリューム感あふれる突き抜ける高音、そしてバランスの良いソリッドサウンドは、今後も僕を支え続けてくれるだろう。
3月17日東京オペラシティ公演も、もちろんこの楽器一台でプレイ予定。
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蛇足だが、僕は10代の頃から、俳優の故田村正和さんに雰囲気がそっくりと言われ続けており、いまでも初対面の日本人には必ずといっていいほどそう言われる。
実は、前回の東京公演の際に乗ったエアラインの、とてもチャーミングなスチュワーデスおふたりにも、そういう理由で(機内で)声をかけられ、コンサートにまで足を運んでもらったのだが、さらに公演後、こちらに戻る際にやはり機内で会った、もうひとりの別の(負けずにチャーミングな)スチュワーデスの女性にも、まったく同じ理由でニューヨークで呼び出されて会うことに...。
なんだか正和さんのオショウバンにあずかっているようで、喜んでいいのかわからないが、その三名のセニョリータのうちのおひとりの名字が、あまり聞くことのない、とても印象的で綺麗な響きをもつもので、僕はそこから「ガルシア・ロルカに捧げるバラーダ」の第二楽章のギターパートを作曲することができた。
これは、「血の婚礼」同様、ロルカの代表作である「イェルマ」最終幕の、幻想と倒錯が交差する’劇中神楽’のシーンを朗誦と舞踊で表現するものだが、この女性の名字は、その雰囲気を連想させる、本当に美しいもので、僕はその響きをモティーフに、この部分のギターソロを、東京滞在中に作り上げた。
霊感というものは常に、どこからともなく突然やってくる。
それにしても、若い時にいくら美男子でも、60歳70歳も過ぎれば、いったい昔日の面影どこへやらという雰囲気の衆が多いなか、年齢を重ねても、きちんと最後まで二枚目ぶりをキープし、こうして多くの女性たちを魅了し続けた田村正和さんは、ひとりのエンターテイナーとして本当に素晴らしいと思う。
天国の田村正和さんにサルー!
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これは、もっとも最近(1月20日)の僕です。
言われてみれば髪の毛とかも、なんとなく雰囲気似てるかな?
もちろん意識しているわけではありません。
僕はアメリカでは、もっぱらジョン・レノンと言われます。
本人に会ったことのある知り合いの話を聞くと(ワシ鼻の)顔もさることながら、背丈や体つきから感じられるムードが似ているらしい。