日本語訳によるアマリア・ロドリゲス詩集
ああ 私の故郷(ふるさと)の人々よ
今だからこそ わかります
私の抱いている この悲しみは
あなた方から受け継いだものなのですね
私とあなた方のこの運命は
私たちを繋ぐ縁(えにし)なのです
どんなに否定されようと
同じギターラに張られた弦なのです
奏でられるギターラの
うめくような音を聴くたびに
我を忘れて
泣き出したい気持ちになるのです
そして 静かに身をゆだねていますと
優しさに包まれるようです
苦悩が深ければ深いほど
私は歌って悲しみを和らげるので
(「故郷(ふるさと)の人々よ」彩流社 ”アマリア・ロドリゲス詩集/歌いながら人生を“より)
“ファドの女王”アマリア・ロドリゲスに魅せられた、ポルトガル文化に深く精通した四人の日本女性グループ’カウド・ヴェルデ’によって、アマリア自身が書いた詩集が日本語訳で読めるようになりました。
私はこの素晴らしい本を、ことしの四月に、’カウド・ヴェルデ’を主宰する、日本ポルトガル協会の清水茂美さんよりプレゼントしていただき、すっかり感激したものです。
ファドはヨーロッパの最果て、ポルトガルの孤愁(サウダーデ)の調べですが、それを日本の女性らしい優しさと美しい言葉の響きでいっぱいに包み込んで邦訳されたこの詩集、きっと天国のアマリアさんも喜んでいるに違いありません。
また、一般にレコードなどで親しまれている、いわゆる’アマリア節’とは一線を画すような愛らしい内容の詩が残されていたことも新鮮な驚きでした。
ポルトガル、ファドの愛好家の方々はもちろん言うまでもなく、それに加えて、美しい詩を愛読なさる方々にとっても必帯の書といえるでしょう。
ぜひ多くの皆様に読んでいただきたいと思っています。
アルゼンチンのユパンキも、自身の分身ともいえるギターに対し、美しい詩の数々を残しましたけれど、このアマリアさんの’故郷の人々よ’を読むと、なんだかさらにギターに対する感じ方が変わるようで、私はまさに言葉を失う思いでした。
素晴らしい一遍だと思っています。