H. Villa-Lobos Guitar Album エイトル・ヴィラ=ロボス ギターアルバム

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Introduction: Aria (Cantilena) -Bachianas Brasileras V-
1 Prelude IV (Live in Tokyo, 2011)
2 Prelude III
3 Cadenza -Copacabana Concerto- (Live in New York City, 2011)

イントロダクション:アリア(カンティレーナ)~ブラジル風バッハ第5番~
1 プレリュード第4番 (東京ライヴ)
2 プレリュード第3番
3 カデンツァ ーコパカバーナ協奏曲ー(ニューヨークライヴ)

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僕はかつて、ニューヨーク在住のあるアメリカ人のソプラノ声楽家との出会いから、20世紀を代表するサウンドクリエイターのひとりである、ブラジルのヴィラ=ロボスのギター曲を自分の音楽に導入したが、それは、思ってもみなかったカーネギーホールのステージへと僕を導く階段になってくれた。

これは、そのヴィラ=ロボスのギター曲のなかでも、僕が最も好きな三曲を映像とともに楽しんでいただけるミニアルバム。

プレリュード第4番は、東京公演のなかでプレイしたもの。
ライヴ一発録りというのは、必ずしも100パーセントの出来になることはないが、このパフォーマンスは、まあまあかなという感じ。

イントロダクションの、おなじみの名曲ブラジル風バッハ第5番のアリア(カンティレーナ)と、プレリュード第3番は、はじめてヴィラ=ロボス作品を収録したCDアルバム「カミナンテ」レコーディングの際に録音したものだが、トータルでブラジルの巨匠作品が4曲となってしまい、あまりにもヴィラ=ロボス色が強くなってしまったので、この二曲はラインナップから外した。

未発表音源として残っていたものを、今回はじめて公開。

アリア(カンティレーナ)は、まず伴奏パートを録音し、そのあとヴォーカルパートをギターでかぶせたものだが、この極致ともいえる美しいメロディーは実にギター的。
ギターのデュオ曲としてじゅうぶんいけるだろう。

ラストのカデンツァは、ギター協奏曲「コパカバーナ」の第二と第三楽章の間に置かれた、リズムの譜割を持たない、すべてプレイヤーに委ねられてプレイされる、文字通り「カデンツァ」だが、ソロ曲として独立できる素晴らしいナンバー。

ニューヨークの音楽通が大勢足を運ぶ、伝説的ホットスポット「バージミュージック」における映像とともにお楽しみください。

この「バージミュージック」というのは、実は、ニューヨーク湾に停泊している船のなかをコンサートホールに改装したもので、聴衆は、プレイヤーの背後に広がる、息を呑むようなニューヨークのダウンタウンの夜景とともに音楽を楽しめる。

2010年には、ギターの恩師・故鈴木巌先生が、僕と一緒にジョイント公演をしてくださった思い出の場所だ。

Chopin’s Nocturne for Andrzej Wajda-san アンジェイ・ワイダさんに捧げる’ショパンのノクターン’

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Una rara interpretación de ‘gran pieza clásica’ homenajeada a maestro Andrzej Waida (1926-2016,) el gran director polaco del cine y del teatro, fue grabada durante mi concierto en Tokio, el 14 de abril de 2017.

A live rare “classical masterpiece” performance, dedicated to Mr. Andrzej Wajda (1926-2016,) the greatest Polish film and theater director, recorded live in Tokyo on the 14th of April, 2017.

ショパンの名曲を、ソロギターにアレンジして披露した珍しいライヴパフォーマンス。

ピアノとギターは、その音量と機能性に圧倒的な差がある。
ゆえに、そもそもが特性的なギターの響きを持っているスペイン国民楽派のような作品は別として、特にロマン派ピアノ曲の楽譜をそのままの構成でギターに置き換えても、そのエネルギーとエモーションは伝わらない。

これは、おそらく作者の意図したところを最大限に伝えることができると信じる、僕のオリジナル編曲。

ビデオに出てくる金の懐中時計は、1819年末から1820年初頭にかけて、ポーランドの首都ワルシャワに滞在したイタリアの大歌手アンジェリカ・カタラーニが、当時若干10歳だったショパンにプレゼントしたもの。
彼女は、少年ショパンの傑出した才能に深い感銘を受け、彼のコンサートを主催。感謝の気持ちを込めて、この、記念献呈文が彫り込まれた(ビデオの最後のほうで読める)素晴らしいギフトを贈ったそうだ。

ワルシャワにて、カタラーニより、10歳のショパンへ。1820年1月3日

と、フランス語で表記されている。

ショパンはこの華麗な贈りものを、生涯一度も手元から放すことはなかった。

なお、このビデオは、生前たいへんよくしていただいた、「灰とダイアモンド」、「大理石の男」、「ダントン」などで知られる、ポーランドがいまも世界に誇る大映画監督、アンジェイ・ワイダ(1926−2016)さんへのオマージュとして制作した。

ラストに出てくる本は、僕がはじめてワルシャワで公演した際、コンサートの前日、旧市街のレストランで夕食をご一緒したワイダさんから直接いただいた、米アカデミーの特別名誉賞を受賞された際に記念出版(2000年・非売品)されたスペシャルブックで、最初のページには、ワイダさんの、日本語による僕への直筆メッセージが記されている。

この(愛らしい)日本語は、ワイダさんが、ディナーに同席してくださった日本大使館の外交官に、まず頼んで書いてもらった’例文’を、そのあとその場で書き綴ってくれたもの。

La Gitane / Homage to Kees Van Dongen 「ラ・ジターヌ」キース・ヴァン・ドンゲンに捧げるギターソロ

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Una interpretación en vivo homenajeada a Kees Van Dongen (1877-1968,) el gran pintor Holandés.

An homage live performance to Kees Van Dongen (1877-1968,) the greatest Dutch painter.

視覚芸術、特にモダンアートの類にはあまり関心がないが、オランダに生まれ、後年パリに出て、ピカソらとともに20世紀初頭の前衛芸術を創りあげた巨匠、キース・ヴァン・ドンゲンの絵画には惹かれる。

これは、そのなかでも僕が大好きな作品「ラ・ジターヌ(ジプシー娘)」に敬意を表した、僕の2017年の東京ライヴ映像を中心に構成したビデオ。

ジプシーの女性をテーマにした絵画というのは、その多くは強さが強調されて線がキツく、どちらかというと、匂ってくるようなセクシーさが描かれたものが多いが、このフォーヴィズムの巨匠による、「知りたがり屋さん」と副題がつけられたジプシー娘は、はにかんだような、なんとも愛らしいチャーミングさに溢れていて本当に素晴らしい。

ちょっぴシャイで、”知りたがり屋さん”のジプシー娘が、おそるおそる僕のコンサートに来て、後ろのほうで、何かあったらすぐに逃げてしまうような雰囲気で僕のギターを聴いている…

このビデオは、そんな感じで作ってある。

なお、フランス語のジプシー女性を意味する「la Gitane」は、男性型の「le Gitan」と混ぜこぜになって、日本語では両方とも「ジタン」と表記されるが、僕は原語により近い発音である「ジターヌ」の響きのほうが好きなので、「ラ・ジターヌ」とタイトルした。