今回の日本滞在中、私は仕事をまったくはなれ、軽井沢に三日間滞在しました。
子どもの頃、毎年ひと夏を過ごしたこの美しい土地は私にとって第二の故郷のようなものです。
写真は、30年ぶりに訪れた当時の別荘。私はここで毎日澄んだ空気を吸いながら、自転車を駆って一日中走り回ることによって、現在の丈夫で健康なからだを得られたと思っています。
私はこの木が大好きでした。彼もきっと私をおぼえてくれていたでしょう。
“きみが忘れてしまった故郷の木は いつでもきみをおぼえている
そして夜毎に問いかける 幸せでいるかい それとも...”
子どもの頃過ごした土地との30年ぶりの再会で、私はユパンキの傑作曲、’郷愁の老木’の歌詞を思い出し、いつしか胸をあつくしていました。
「El Mundo Maravilloso de Las Poesias」カテゴリーアーカイブ
素晴らしき詩想の世界
El Gran Poeta Granadino
日本へ出発する日が近づいてきました。今回の最初の仕事は、着いてすぐの3月17日に広島で開催される、広島スペイン協会の設立セレモニーへのご招待を受けての演奏です。
当日私は、スペインに縁のあるナンバーを数曲披露するつもりですが、そのなかのひとつとして、アルゼンチンのユパンキと、グラナダが生んだ大詩人、マヌエル・ベニーテス・カラスコ(1922-1999)の共作による「El Niño Duerme Sonriendo – 微笑みながら坊やは眠る」を予定しています。
カラスコの詩作は、日本でほとんど紹介されていないためとても残念ですけれど、現在セビージャの中心地には、彼の名を冠した通り、Avenida Poeta Manuel Benitez Carrascoがあるほどで、やはりグラナダに生まれた、世界的にその名を知られる大詩人、フェデリコ・ガルシーア・ロルカ同様、このカラスコの名はいまもアンダルシアの人々の誇りなのでしょう。
今はなきワールドトレードセンターでのインタビュー
2001年の8月に、ブエノスアイレスの人気テレビ番組‘Canal 5 de Vicente Lopez’で放映された私のインタビューがあります。
実はこれは、あの恐ろしい惨劇をそのちょうど二ヶ月後に迎えることになる、NYワールドトレードセンターのツインタワーを見上げるプラザの一角で行われたものでした。
ここにその放送が収録されたビデオテープがあり、これには私の映像に加えて美しいツインタワーのショットが挿入されているのですが、私はこの街にきて間もない頃、タワーの屋上に登って、はるかに広がるマンハッタンを見下ろしながら、“これからよろしくたのむぞ”などと祈ったものでした。
その後ニューヨークは、ただひとりでそのふところにとびこんできた若者の願いを聞いてくれ、数多くのプレゼントをしてくれました。
あの9月11日の朝、このタワーが崩れ去った瞬間、私はまさに胸をえぐりとられるような思いでした。
インタビューに答えている私を見下ろす美しい姉妹のようなツインタワー、こんなかたちで想い出のなかにのその姿を残すのみとなってしまった運命を考えると、もういまこのビデオを観ることはできません。
今年、4年めを迎えるナインイレブン、その日私たちニューヨークに暮らす者は、もう二度とこんなことが世界のいかなる場所ででもおこらないように祈るのです。