El Gran Poeta Granadino

070310

日本へ出発する日が近づいてきました。今回の最初の仕事は、着いてすぐの3月17日に広島で開催される、広島スペイン協会の設立セレモニーへのご招待を受けての演奏です。

当日私は、スペインに縁のあるナンバーを数曲披露するつもりですが、そのなかのひとつとして、アルゼンチンのユパンキと、グラナダが生んだ大詩人、マヌエル・ベニーテス・カラスコ(1922-1999)の共作による「El Niño Duerme Sonriendo – 微笑みながら坊やは眠る」を予定しています。
カラスコの詩作は、日本でほとんど紹介されていないためとても残念ですけれど、現在セビージャの中心地には、彼の名を冠した通り、Avenida Poeta Manuel Benitez Carrascoがあるほどで、やはりグラナダに生まれた、世界的にその名を知られる大詩人、フェデリコ・ガルシーア・ロルカ同様、このカラスコの名はいまもアンダルシアの人々の誇りなのでしょう。


「微笑みながら坊やは眠る」は、ユパンキが書いた導入部、

“夜 川のあぶくがきみにおべべを編んでるよ 私の坊や
あのきれいな星をひとつとって きみにガラガラを作ってあげたいな 私の坊や
微笑みながら眠る坊やよ ああ私の坊や
きみの世界はなんて美しいんだろう 私の坊やよ”

という、夢見るような美しい歌の部分ではじまりますが、その後曲調は一転、カラスコの手になるシビアな現実を謳った詩が朗読によって続けられます。

“坊やは魚になりたくて 浜辺で足を海につけてみたけれど 
坊やは魚になることはできなかった
坊やは雲になりたくて 大空を見上げてみたけれど 
坊やは雲になることはできなかった
坊やは大人の男になりたくて 精一杯声を出してみたけれど 
その声は世界にはとどかずに
坊やは坊やのままだった
時が流れ 男はひとり歩いていた
喜びと幻滅に苛まれながら ひとり世界を歩いていた
そして男は 坊やになりたいと思った
雲に 魚に
しかし浜辺は苦悩にあふれ 雲は昨日のままだった
そして男は理由もなく歩き続ける
疲れはてうめき声をあげる 坊やの心とともに”

マヌエル・ベニーテス・カラスコは、14の方法によって「死」を表現したといわれる詩人で、また、この作品にもあるように、その詩作の多くに「海」が描かれています。
果てしなく広がる大海原から、彼はその独特のユニヴァーサルな現実的感覚を得ていたのでしょうか。
昨今、日本に行ってテレビのニュースを見ると、あふれんばかりの子供たちの悲しい話題に思わず目をそらすことがしばしばです。
ユパンキもカラスコも、もしかしたら近い将来起こりうる、こうした子供たちの悲しい運命を感じていたのかもしれません。
私は当日、いろいろな思いをこめてこのナンバーを演奏したいと思っています。

EL NIÑO DUERME SONRIENDO
(A. Yupanqui – M. Benitez Carrasco)
Cantado
La noche, con la espumita del río,
te está tejiendo un encaje, mi Niño.
Quiero la estrella del ciclo mas bella,
para hacerte un sonajero, mi Niño.
El niño duerme sonriendo, mi Niño.
¡Ah, mi Niño ¡
Qué bello mundo es tu mundo, mi Niño.
¡Ah, mi Niño!
Recitado
El niño quiso ser pez
y fue a la orilla del mar.
Puso los pies en el agua
pero, no pudo ser pez.
El niño quiso ser nube
y fijo al cielo miro.
Volaba el aire en el aire
pero, el niño no voló.
El niño quiso ser hombre,
fuerte, compuso su voz.
Mas el mundo era tan suyo
que el niño, niño quedo
.
Fueron pasando los años
y el hombre alcanzó su voz,
y anduvo par esos mundos
mezclando dicha y dolor.
Y el hombre quiso ser niño,
quiso ser nube y ser pez,
mas la playa era de angustia
y las nubes el ayer.
Y el hombre va par el mundo
Con razón o sin razón,
y lleva un niño frustrado
gimiendo en su corazón.
Qué. bello mundo es tu mundo, mi Niño.
¡Ah, mi Niño! …