“私にとって、愛するギターとともに歌うということはすなわち私自身を表現することです。
色づく山々や、歌いながら流れてゆく川、それらの美しい自然によって育みを受けながら、
この世界に存在する権利を受けるものすべてとともに生きる喜びをわかちあうことなのです”
エドワルド・マルティネス・グワジャーネス (1956ー1998)
エドワルドの詩集 ‘人生のために、平和のために’ の冒頭に書かれたメッセージ。
フォルクロリスタとしてだけではなく獣医の資格をも持っていた彼は、各国で行われるエコロジーの国際サミットなどにも常に出席していました。
ギターを弾く手が鳩になっているイラストは、この吟遊詩人の音楽すべてを象徴するものです。
エドワルドとともに出演した、ニューヨーク市恒例の‘アースデイ・フェスティヴァル’のプログラム。
テニスのUSオープンの会場のある、フラッシング・メドウ・パークの野外ステージで、ネイティヴ・アメリカンの音楽やレゲエ、アフロ、ロックなどと一緒に白熱したライヴのオープニングをつとめました。
“シロは4月14日(Dia de las americas ー南北アメリカ大陸における国家連合の日)生まれだから、ラテンアメリカの文化と関わるのはなんの不思議もない。”と、生前エドワルドは言っていました。
いつも持ち歩いているためボロボロですが、イタリア映画‘イル・ポスティーノ’で広く一般にも知られるようになったチリの国民的詩人、パブロ・ネルーダの詩集。
このなかの、‘南十字星の詩’ に‘4月14日’のことが謳われています。
私は、エドワルドの演奏があまりに素晴らしいので、コンサートで一緒に演奏するのが実はいやでしたが、彼はいつも、“きみには、ステージにでてきただけで人を魅きつけることのできるすごいカリスマがある。ぼくはそれが羨ましい。”と言って励ましてくれました。
エドワルドはきっとこれからも、天国から私の長い道のりを見守ってくれることでしょう。
エドワルド の実兄のルイスもまた、ユパンキを驚愕させたというギターの名手でした。
ユパンキの名著 ‘風の歌-El Canto del Viento’ の第十章、‘セロ・コロラドの神秘’ でも、当時8歳のルイスのことが、‘ルイス・マルティネス、驚くべき小僧っ子!’と写真入りで紹介されています。
彼は演奏するときだけは‘ルイス・デル・セーロ’ と名乗っていましたが、プロにはならずに一生精肉業者としてセロ・コロラドで暮し、ワインを片手にギターを弾いた典型的なクリオージョ(地方のいきなアルゼンチン男)でした。
ルイスの弾くチャカレラをまじかで聴いたときは本当に吹っ飛ばされそうでしたが、彼もまた10年前に、エドワルドと同様、ガンで他界してしまいました。
いま彼らが生きていたらどんなによいかと思います。本当に残念でなりません。
ユパンキの‘風の歌’と、本文で紹介されている8歳のルイス・マルティネス
ちゃんとした写真がないのが残念ですが、セロ・コロラドのマルティネス兄弟と一番右から、長男ルイス、次男エドワルド、私、三男ウーゴ、そして長姉チニーナ。
これはスポニチの記事からです。
チニーナ(左)の家族
“セロ・コロラドでは誰もギターを習わない。しかしみなギターを美しく弾けるのだ” アタワルパ・ユパンキ
誇り高きアルゼンチンの‘クリオージョ’たち(中央のジーンズ姿が私)
私の大親友であり、人生の大恩人であったエドワルド・マルティネス・グワジャーネス(本名ラモン・エドワルド・マルティネス)。
アルゼンチン、コルドバ州のセロ・コロラドの出身で、ユパンキの名曲に歌われた‘ギジェルマおばさん’を実の祖母に持ったこのフォルクローレ歌手とのニューヨークでの出会いによって、私はユパンキのフォローアーとしての道のりを歩むことになりました。
南米大陸を吹き抜ける風のような詩情に溢れた彼のギターと歌声は、私がどんなにがんばっても真似のできない深い味わいがあり、 私はいつか、エドワルドとのコンサートが日本でできることを願っていましたが、1998年、彼は42歳の若さで、ガンのためにこの世を去ってしまいました。今年は日本的に言えば彼の七回忌にあたります。
私はエドワルドが生前私にしてくれたことに心から感謝するとともに、きっとユパンキと一緒にギターを弾いているであろう天国から、これからも私の長い道のりを見守ってくれるよう祈るのです。
エドワルド・マルティネス・グワジャーネス(1956ー1998)
エドワルド(左)がニューヨークで発行していた‘ビダ・イ・エコロヒーア(ライフ・アンド・エコロジー)’誌の集まりで、ユパンキの曲をデュエット
エドワルドとともに
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アンダルシアのレモンと、イタリアの濃厚なハチミツに、アタウアルパ・ユパンキの魂が溶け合う、静寂のグロリエータ(四阿)「カンテホンド・イベロアメリカーノ」の音楽世界