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Lucía Martínez -Umbría de seda roja- ルシーア・マルティーネス ~紅い絹の影のような女~

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1. Lucía Martínez
2. Gacela del mercado matutino (Gazelle of the morning market)

music created and performed by Shiro Otake
Dance by Changmu Modern Dance Company
2nd guitar on ‘Lucía Martínez by Kenji “ken” Ueki
Artworks by Yu-ri Fujiwara
Video created by Shiro Otake

僕は高校一年生のときに、ガルシア・ロルカの「ルシーア・マルティーネス」と、「朝市のガゼール」という詩を読み、人間なら誰でも心の奥深くに持つ、異性に対する’暗い化け物が巣食ったような’激しいエロティックな感情を、これほどまでに文学的に表現できる人物がいるのかと大きな衝撃を受けた。

これは、そのふたつの詩をギターの幻想曲として表現したもの。

どちらもクオリティーの高いライヴ音源で、2曲目の「朝市のガゼール」から、実際にライヴでプレイしている映像が入る。
わかりやすいように、日本語の字幕も入れた。

アートワークは、親しいヴィジュアルアーティストのYu-ri Ave(芙似原由吏)さん。また、最初のルシーア・マルティーネスのセカンドギターとして素晴らしいサポートプレイを聴かせてくれているのは、ロックギターの植木”ケン”健司くん。
エレクトリックギターが本職だが、アコースティックもいい。

また、2曲目の朝市のガゼールで幻想的なモダンダンスを披露するのは、韓国を代表する現代舞踊団「チャンム(創舞)」の優れた四名の女性ダンサー。
ビデオクリップの編集は、僕自身が行った。

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12月8日に行う予定の銀座ヤマハホール公演は、「愛の死〜レクイエム〜」というタイトル。
前衛、そして幻想感覚に溢れるロルカの詩をもとに、今回の忌まわしい、人間の奢りと無秩序が引き起こしたパンデミックを通して、魑魅魍魎とした下界と、光り輝く天空の回廊が激突するような、若干アヴァンギャルド感覚を伴う新しいカンタータの初演にしたい。

パブリシティのアートワークは、引き続きYu-riさんが担当してくれ、また、ラテン語と日本語による、レクイエムの重要なソリスト・シンガーを弟のLAVAが引き受けてくれた。

ぼくはいま、全情熱を傾けて、このアヴァンギャルド感覚を伴う新作の完成に取り組んでいる。

Un secreto directamente transmitido desde Atahualpa Yupanqui ユパンキ直伝「恋する鳩の踊り」

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Es un secreto transmitido desde Atahualpa Yupanqui directamente en Cerro Colorado en enero, 1989.

This is a secret transmitted from Atahualpa Yupanqui directly in Cerro Colorado, Argentina in January, 1989.

1989年1月、アルゼンチン、コルドバ州北部セロコロラドにおいて、僕がプレイするバッハを聴いたユパンキはとても喜び、彼のギターの”マジック”の手ほどきをしてくれた。

恋する鳩の踊り。

僕は自分について、ユパンキの弟子であるとか継承者であるとかいう意識を持たないが、この曲に関しては、ユパンキ直伝といって間違いないだろう。
そのときユパンキが、すぐ目の前で出してくれた音は、いまでも僕の頭のなかで響き続け、そして僕はずっとその音を追い続けている。

An extreme guitar solo by Atahualpa Yupanqui 「風の枝が泣いている」ユパンキ・ギターソロの極致

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la interpretación en vivo de ‘Lloran las ramas del viento,’ un extremo solo de guitarra sin duda, y ‘El alazán,’ una canción que cambió mi vida.
Es verdaderamente extremo ‘lloran las ramas…’
Me parece he de interpretarlo un poco mejor para el tiempo en que mi pelo vuelva todo blanco.

A live performance of ‘Lloran las ramas del viento (The branches of the wind cry),’ an extreme guitar solo, and ‘El alazán (The sorrel horse),’ a phenomenon which changed my life forever.
‘The branches…’ is truly extreme. I think I may be able to play little better by the time when my hair turns all white.

数あるユパンキ・ギターソロの中でも、最も深みに満ちた極致的芸術と呼んでいい「風の枝が泣いている」と、僕の運命を変えた名曲「栗毛の馬」のライヴパフォーマンス。

「風の枝が泣いている」は、’ビダーラ’という、アルゼンチンフォルクローレの主要リズムで書かれた、スローでシンプルな構成ながら、小手先のテクニックだけでは全く音楽にならない、まさにギターがもつ美しい音色と精神性が極限まで表現された作品。

この日は、ライヴのオープナーとしてプレイしたが、僕の表情から, ステージに立って”さあこれから”という段に,グーッと緊張感が高まってきたのがきっとお分かりいただけるだろう。
この曲ひとつで人の心を打つのは容易なことではないということを、あらためて、僕はこの瞬間に認識した。
「風の枝が泣いている」をステージでプレイしたのは、後にも先にもこの夜だけ。

この日のパフォーマンスはまだまだだが、ひとつの記録として貴重なものだと思っている。

おそらく僕の髪の毛が真っ白けになる頃、もうちょっとマシなプレイができるようになるだろう。

‘Muerto de Amor (Death of Love)’ La primera’Cantata’ para estrenar 12.8.21 初のカンタータ「愛の死」銀座ヤマハホール初演

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El 8 de diciembre de este año, voy a representar ‘Muerto de Amor,’ mi primera ‘cantata‘ en la sala mayor de Yamaha Hall Tokio.

On the 8th of December, 2021, I will premier ‘Muerto de Amor (Death of Love,)’ my first ‘cantata‘ at the Yamaha Hall Tokyo.

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2021年12月8日、東京銀座ヤマハホールにおける、初の’カンタータ’作品「愛の死」初演が決定した。

(動画は、同公演のイメージビデオ。)

春の訪れのニューヨーク。

自分は今、全情熱をこめて、この前衛感覚に溢れる’天空への賛美歌’完成にむけて取り組んでいる。

Un encuentro de Lorca y Yupanqui en Buenos Aires 青年ユパンキとロルカのブエノスアイレスでの出会い

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El video inspirado por capitulo 38 de ‘Este largo camino’ de Atahualpa Yupanqui.
Mientras haya tabernas en los caminos, todos los que caminan serian amigos
Es las maravillosas palabras que regaló Lorca a joven Atahualpa.

A video inspired by the chapter 38 from ‘Este largo camino,’ a special book which commemorated 100 years of Atahualpa Yupanqui.
As long as there are taverns on the roads, everyone who walks would be friends
These are the beautiful words that Lorca gifted to young Yupanqui.

ユパンキの生誕100年を記念してアルゼンチンで出版されたエッセイ集「この長き道〜メモーリアス〜」の第38章、”フェデリコ・ガルシア・ロルカ”を読んだ感動から制作したビデオ。

これを読むまで僕も知らなかったのだが、戯曲「血の婚礼」初演のために、やはりスペインの大作家ホセ・ベルガミンらとともに ブエノスアイレスを訪れたガルシア・ロルカは、当地の詩人たちのグループと一晩、アベニーダ・デ・マジョ(五月通り)の小さな食堂で夕食をともにし、グループのなかにいた(ロルカにひたすら憧れていた)まだ無名の20代の青年ユパンキと会っていた。

まず、こんなすごい芸術家たちのエンクェントロ(ミーティング) が、ブエノスアイレスの小さな安食堂で、アロス・コン・ポージョ(チキン入りご飯〜ラテンアメリカの最も庶民的な料理〜)を食べながら行われたというのが何ともいい。

たった2ページだけの短いエッセイだが、ユパンキの文章から、ベルガミン、ロルカ、そして青年ユパンキたちが(チキン入りご飯を食べながら)集っている風景が、まるで映像を見ているように伝わってくる。

食事のあと、ロルカは紙ナプキンになにやら無造作にものを書いていたが、なぜか途中で折りたたみ、書くことをやめてしまった。
ユパンキがそれを食い入るように見つめていると、ロルカは;

これ いるかい?

と、ユパンキに声をかけ、次のようなことを言った。

道に居酒屋がある限り、道ゆくものたちはみな友達だよ

それに対してユパンキは;

”もしくださるんなら、サインしていただけますか?大切にします。”

と、言うと、ロルカは、ただ一言(彼のファーストネームである)’フェデリコ’と書いたそうだ。

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これらの情景を、先日、日本のラテンアメリカ・エキスパートのジャーナリスト・伊高浩昭さんが受け持つ番組で大紹介を受けた際、好評だった僕自身のプレイによるユパンキの名曲「こおろぎのサンバ」とともに再現したのが今回のビデオ。
最後の方で、日本語の字幕をご覧いただける。

道に居酒屋がある限り、道ゆくものたちはみな友達

なぜ僕がロルカを追求するのか、よくお分りいただけるだろう。
ロルカはユパンキにとって、心の師匠だったのだ。

僕が行うロルカへのオマージュは、同時に(言うまでもなく)ユパンキへのオマージュである。
ただユパンキの曲をうまく弾くだけでは、「ユパンキアーノ」という言葉は僕には値しない。

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なお、書籍にあるユパンキの原文には、食堂でロルカとともに集ったブエノスアイレスの詩人たちのグループのメンバーや、「血の婚礼」の主演女優の名前、そしてホセ・ベルガミンからロルカに継承された’韻律スタイル’などについて細かく表記されているが、ビデオの映像で見るとごちゃごちゃするので、このあたりは簡略化した。