アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 IV
Querencia(ケレンシア -故郷への想い-)
みな 自分たちの故郷について語る
あたかも そこがいちばんであるかのように
俺が想いをよせる故郷とは 一本の道
月と太陽の下にある 一本の道
調べひとふし歌おうか
星が俺の声を 満たしてくれる
そして風が 流れる雲に言い寄れば
俺の歌は 霧となる
俺は はるか遠い里(さと)からやってきた
俺の里の名は...轍(わだち)
俺が胸に抱く愛の名は ギター
そして俺の馬...*パシエンシア
夜更けに俺は 心の中をみつめて歌う
夜明けの光をもとめて
そして 広がる野をみつめながら
希望に焦がれ 歩き出す
みなそれぞれが それぞれの故郷をもち
あたかもそこが いちばんであるかのように語る
俺が思いを寄せる故郷とは 一本の道
月と太陽の下にある 一本の道
(*パシエンシア -Paciencia- 辛抱、忍耐、根気。 英語の’Patience< ペイシェンス>‘に同じ。)
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アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 III
海、山、風、川、森、平原、木々、花々、そして動物たち。
自然界のなかでともに生きるものたちとの心のふれあいを美しい詩にたくして謳いあげたアタウアルパ・ユパンキ。
以前、さすらいの旅人と、それを見守る木々との素晴らしい心の交わりをテーマにした’郷愁の老木’についてふれました。
今回は、前述の’ギターラ’と同じく私の愛読書であり、ユパンキ名作詩集である’ひとりぼっちの石 (ピエドラ・ソラ)’のなかから、路傍にひっそりと佇む、まるで忘れ去られてしまったような石との心のふれあいを謳った、同タイトルによる作品をご紹介したいと思います。
‘ひとりぼっちの石’は、詩集のトップにある、’デディカトーラ’とよばれるユパンキ自身による献呈文のあと、この名作詩集の冒頭を飾る作品としておさめられています。
詩集 ‘ひとりぼっちの石 ‘より
デディカトーラ (献呈文)
俺の大地よ!
お前の抱く山々の
その道の上で
俺の心は これらの言葉に出会った
その 大いなる
その 決して言語におきかえることのできないものが
俺のなかに宿った
まるで お前がもつ
静けさにみちた 宇宙のような力に
奥深く守られた 音楽の調べのように
- アタウアルパ・ユパンキ
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アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 II
私はこれまでに、アルゼンチンの多くの地方を旅して見聞を広め、そしてできるだけたくさんの美しく力強いフォルクローレの調べを体のなかに、そして血の中にしみこませようと努力してきましたが、結果それは、3年前に行った、’フォルクローレのゆりかご’と呼ばれるサルタにおける公演において、私のキャリアの第一段階としての頂点を招きむかえてくれたかのように思えました。
そんな私が、いまだ訪れたことのない美しい土地。
それが、ビダーラ(ビダリータ)、チャジータといった独特の調べと豊かな自然、そして広大なブドウ畑をその胸にいだく、ワインの名産地として知られる’ラ・リオーハ’地方です。
(写真は、私のサルタ公演を報じた、’エル・トリブーノ紙’。
‘日本人ギタリストとユパンキ作品’という見出しで、素晴らしいユパンキの写真が使われています。
ユパンキは生前、母国のアルゼンチンや隣国のウルグアイでは、’Don Ata(アタ親分)’と、親しみをこめて呼ばれていました。)
そのアタ親分が、ラ・リオーハによせた素晴らしい詩をご紹介します。
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‘夢見ながら歩くものたち’とともに
‘栗毛の馬’や’牛追い’、’牛車にゆられて’、’眠れるインディオの子’、そして’トゥクマンの月’などの名曲の数々を、決してコンサートにおいて欠かすことのできないたいへん重要なレパートリーとして持ち、これまで数多くのユパンキ作品の研鑽、演奏を続けてきた私ですが、実はこのところ、2005年春の東京オペラシティーでの二回公演の際に演奏した、’微笑みながら坊やは眠る’のそれ以来、新たなユパンキ作品をレパートリーにとりいれる作業から二年半ほど遠ざかっていました。
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アンダルシアのレモンと、イタリアの濃厚なハチミツに、アタウアルパ・ユパンキの魂が溶け合う、静寂のグロリエータ(四阿)「カンテホンド・イベロアメリカーノ」の音楽世界