広島世界平和記念聖堂ライヴ音源 II
去る四月に行われた、広島世界平和記念聖堂公演におけるライヴ録音。
パート1では、アルゼンチン・フォルクローレギターの醍醐味のひとつといえる、’ガト’のリズムを用いて作曲した’ラ・サンティアゲーニャ’をお聴きいただきました。
今日はそのパート2。
なによりも美しい音色の創り方を重視する恩師、鈴木巌先生直伝の、常に私を内側から支えるオーセンティックなクラシック・ギターのテクニックと、そこから生まれる無限の音楽への思いとが溶け合い、独自の世界を構築するオリジナル・ギターソロ曲、’風が歌う地~ユパンキに捧ぐ’をお楽しみください。
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いまを遡ること14年前、1994年2月、盛夏のアルゼンチン、コルドバ州セロコロラド。
私は、そのさらに5年前の1989年1月に、かの地においてギターの手ほどきをしてくれたアタウアルパ・ユパンキ(1908-1992)のお墓を訪れ、追悼演奏を行いました。
ユパンキとのセロコロラドでの出会い同様、このトピックも、これまでウェッブサイト上でご紹介をしていなかった当時の記録です。
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アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 XI
3月16日に行う、ニューヨークエリアのラテンアメリカ系コミュニティー主催によるアタウアルパ・ユパンキへのオマージュ・コンサートの冒頭において、私が奏でるオリジナル・ギターソロ、’風が歌う地-ユパンキに捧ぐ‘をバックに、一遍の壮大な美しさに満ちた詩作が女声の朗読によって読みあげられます。
それが、’歩く大地’と呼ばれた、この南米に生をうけた偉大なる巨人の、その哲学の原点ともいえる、’Tiempo del Hombre (ティエンポ・デル・オンブレ)’です。
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1992年5月23日、フランスのニームにてこの世を去った、南米フォルクローレの最高峰アタウアルパ・ユパンキ。それからはやくも15年の歳月が流れました。
今日は、私が彼への想いを込めて1993年に作曲した’La Tierra Donde Canta El Viento -風が歌う地-ユパンキに捧ぐというギターソロを皆様にお聴かせしたいと思います。
1989年に、私がユパンキにギターの手ほどきを受けた、アルゼンチンのコルドバ州北部の山村セロ・コロラドにある彼の別荘は、川のせせらぎが、鳥の歌声が、そして木々を優しく揺らす風の音にかこまれた、まるで桃源郷のような場所でした。
この風景を思いながら作ったのがこのギター曲ですが、1994年にこの地をふたたび訪れ、ユパンキのお墓の前で演奏してからは、それを最後に一度もステージで演奏していません。また、現在流通している私の3枚のCDにも収められていません。
このクオリティーの高い音源、そしてこの、”風が歌う、私にとっての聖地”の写真が残っているのは、ニッポン放送の香高英明さんのおかげです。
まず、香高さんにこの場をかりて、心からの感謝の意を表したいと思います。
また、この録音を皆様が聴いてくださる頃、私はすでに公演ツアーのためポーランドにいます。
今日この日に、この大切な私の想いを私に代わってオンライン上で美しく飾ってくださった、ふだん東京でこのウエッブサイトを管理してくださっている山本´rico´理恵子さんに、心よりお礼を申し上げます。
(’風が歌う地’には、中間部で、私のギター曲にはめずらしくトレモロを使ったメロディーが登場します。
実は私は昔からトレモロが得意で われながらこのメロディーもきれいに響いているのですが、このあと何かの本でユパンキが、”俺はトレモロなんかやらないよ。俺はお百姓が弾くようにギターを弾くのさ。”と言ったという話を読み、それ以降一切このテクニックを使うことをやめてしまいました。)
この15年間は私にとって、自身の音楽を創ってゆくうえでの、そのしっかりとした土台を築き上げるために費やした年月でした。
そしてそれが、時には激しい雨や嵐を受けた末にようやく土として固まってきたいま、これからの15年は、さらにこの巨匠の音楽に魂をこめて演奏できるよう、より険しくなる道のりを歩いてゆこうと思っています。
私のユパンキへの想いはこれからも変わることはありません。
たとえもう人前で弾くことはなくとも、この’風が歌う地’は私の心の中で、1989年の夏にセロ・コロラドで過ごしたかけがえのない時間とともに、永遠の光を放ちながら鳴り響き続けているのです。
アンダルシアのレモンと、イタリアの濃厚なハチミツに、アタウアルパ・ユパンキの魂が溶け合う、静寂のグロリエータ(四阿)「カンテホンド・イベロアメリカーノ」の音楽世界