Atahualpa Yupanqui on Sakazo Nakade 1978 中出阪蔵さんギターによるユパンキ

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La Soñadora,’ interpretado con la guitarra de Sakazo Nakade, uno de los mejores guitarreros en Japón.
Para mi, no hay más bello solo de guitarra en este mundo.

La Soñadora (The Dreamer),’ played on Sakazo Nakade, one of the finest classical guitar makers in Japan.
To me, this is one the most beautiful guitar solo pieces, created by one great musician who perfectly knew about the true sound and the amazing function of the guitar.

アタウアルパ・ユパンキの名ギターソロ、「ラ・ソニャドーラ(夢見るサンバ)」を、日本の名工、故中出阪蔵(なかでさかぞう)さんが作ってくださった楽器を使ってプレイした一般非公開動画(反復省略)。

1978年、鈴木巌先生の門下生として教室に通いだして間もないある日、先生が、”どんな楽器を使っているのか見たいので持ってきなさい。”と言うので(ケースは持っていなかったので小林旭よろしく)かついで行くと、先生はそのギターを見るなり、”うわっ!こりゃひでえ!”と叫び声をあげた。

それは、うちのおばあちゃんが近所でもらってきた、鈴木バイオリン製のボロボロのギターで、どこもかしこも痛みだらけのすさまじいものだったが、先生はすぐに母に電話をかけ、”史朗くんにはギターの才能があるが、これでは伸びない。ぼくの知り合いに中出阪蔵さんという優れた製作家がいて、ぼくが頼めば高品質の楽器を値引きして作ってくれる。一生もつ素晴らしい楽器になるので、是非買ってあげてください。”と、母を説得してくれた。

そしてその年の暮れ、はじめての門下生発表演奏会において、自分はこの楽器を抱えてソルのメヌエット(グランド・ソナタ)をプレイし、優秀演奏賞に選んでいただいた。

鈴木先生の言葉通り、誕生から40年以上が経過しているにもかかわらず、中出さんギターの音は、衰えるどころか、どんどん深みを増してきている。

低音中音高音ともに、現代の、見た目ばかりこぎれいで”弱っちい”ギターとは本質的に異なるパワーがあり、香り高いクラシカルサウンドと、力強い民俗的サウンドを兼ね備えた、本当に素晴らしい楽器だ。

これは、ニューヨークの自宅の全く音が響かない部屋で、なんのエフェクトもかけずに録った音だが、このような録音でも、中出さんギターがいかに優れた機能性を持っているかよくお分かり頂けると思う。

後年、このギターには、スペインの不世出フラメンコ舞踊家アントニオ・ガデスによる、”シローへ、同士より親愛を込めて”と、力強いメッセージが添えられたサインがしたためられた。

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「夢見るサンバ」は、自分が最も好きなユパンキ・ギターソロ曲のひとつ。
ギターという楽器の音色と機能性を知り尽くしていたプレイヤーのみが創造し得た、単に指が動くだけでは全く音楽にならない、まさに極限の深みをもつナンバーだ。

かつてナルシーソ・イェペス(ジェーペス)は、”人間の精神を表現することがギターにとっての最高のテクニックなら、ユパンキほど高いテクニックを持ったプレイヤーはいない。”と語った。

イェペスもまた、この美しい楽器の音色と機能性を知り尽くした、稀有なプレイヤーであったことは言うまでもない。