Southern Landへの想い Final Chapter

Native American Wisdom

1988年に単身ニューヨークに渡り、ユパンキと出会い、そしてギタリストとしていろいろな国で活動をなどと聞けば、すべてがトントン拍子で進んだようですが、実際は決してそうではありません。
いろいろなことがとにかく最悪であった年1991年、私は、知り合いをたよってニューメキシコ州に移り、観光牧場の住みこみ乗馬ガイドとして働き半年を過ごしたのです。
そのとき知り合った数多くの素晴らしい人々。音楽はカントリーしかしらないカウボーイに、素朴で可憐なチカーナ(アメリカ生まれのメキシコ女性)たち。
なんだか開拓民のムードをそのまま残しているような彼らと過ごした時間は、私にとって、多くのことを学んだかけがえのない体験となりました。
そして、アミーゴになった、ナバホの血をひく青年がくれた一冊の本、”ネイティヴ・アメリカン・ウイズダム”。
誇り高き北米先住民の英雄たちの語録集が、ふたたび私に、ニューヨークへ戻るエナジーを与えてくれたのです。

その後私は、ニューヨークのスラム街のバーやクラブでギターを弾きだし、やがて人生を決定づけることになるユパンキの詩、”ヒロシマ 忘れえぬ町”と出会うことになります。

写真)1991年に、New World Libraryから出版された Native American Wisdom。
頭のうしろからコツンとたたかれたようなハッとする言葉の数々に、当時の私はどれだけ勇気を与えられたかわかりません。
彼らのものの考え方は、その後の私に大きな影響を及ぼしました。

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9.22 ニューヨーク日系人会ホール公演にむけて 4

フォルクローレ大竹史朗奏でる 22日に日系人会で公演

週間NY生活

南米の民族音楽フォルクローレを演奏するニューヨーク在住のギタリスト、大竹史朗が9月22日(金)、午後7時からニューヨーク日系人会館ホールで、「郷愁を奏でる孤高の騎士、大竹史朗の夕べ」を行う。
大竹は、昨年9月のハンターカレッジでのソロ公演成功後、年末にペルーのリマで1200人の聴衆を前に演奏、さらに今年春には、京都大覚寺を舞台に久々の日本公演を行うなど精力的に演奏活動を続けている。
ニューヨーク日系人会では、6月に一度ゲスト出演して演奏したことがあるが、今回は、大竹が13歳の時に始めてラジオで耳にした師と仰ぐアタウアルパ・ユパンキの「栗毛の馬」を当時聴いたままのオリジナル奏法によって再現、本格的なアルゼンチンのフォルクローレの音を披露するという。
大竹は、「ユパンキの継承者などという人もいますが、自分ではそんなことは意識したことはなく、オーセンティックな域にようやく足を踏み入れることができたということをようやく自覚している段階です」と話す。
当日は、日本の郷愁に影響を受けて作った南部組曲も演奏し、日本人の心を通してアルゼンチンやペルーなどの、南米の旋律を演奏する。一曲のメロディーがひとりの少年の人生を決めたその証を歌い上げ、奏でる夕べとなる。

(週間NY生活 2006年9月9日)

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Southern landへの想い 2 Kokopelli,my charm!

南米先住民のフォークロア同様、私を惹きつけてはなさないのが、北米のネイティヴ・アメリカンの世界です。
もともとアメリカは彼らの土地であったわけですが、現在は、政府によって決められた居留区(リザーヴェーション)に暮し、そこにいる限りは税金の免除などが保障されるなどしながら、日常は一般のアメリカ人として生活しています。
ただ今でも、その独自の風習や、言語を守る活動がさかんに行われており、そんな彼らの暮らすリザーヴェーションを訪れるのは、実によい体験です。
特に、アリゾナ、ユタ、ニュー・メキシコに広大な範囲にわたって広がる、北米最大規模のナバホ・リザーヴェーションにある「モニュメント・バレー」は、世の中にこんなに美しい場所がほかにあるだろうかという感じ。

モニュメント・バレー

モニュメント・バレー

写真)美しいモニュメント・バレー。
小学校一年生のときから乗馬を習っていたので、いまでも馬が大好きです。
乗馬ならプロの俳優さんたちにも負けませんよ(!)

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Southern Landへの想い 1 Blue side of Shiro

ボトルネック・スライドバー

およそ前衛的なものや、技巧的なもの意外ならありとあらゆる音楽を楽しみますが、アメリカの南部に起こったブルースは(ユパンキのフォルクローレは別として)、私がもっとも愛してやまない音楽です。
これだけ単純な構成にもかかわらず、その奥の深さはまさに無限で、かつこれだけ心地よく人の心にエモーショナルに訴えてくるものはありません。
それぞれが短い三部構成からなる私の新作「ダヒュ」は、第一部では、静かなブルターニュの海の彼方から聴こえてくる、美しいダヒュの歌声を模した純然たるクラシカル・ギターのソロで幕をあけますが、続く第二部では、がらりと雰囲気をかえ水底に沈んだ王女の恨み悲しみを表現するために、サイド・ギターを加えて、はじめてブルースのギター・テクニックを導入しました。
もちろんいままでステージで、ブルース奏法を披露したことはありません。
しかし少年時代、クラシカル・ギターの勉強と平行して、私はかなりの時間をブルースのレコードを聴くことにあて、自分でもいろいろとその奏法を研究したものでした。
ここでようやくそのときの経験が役にたちそうです。
さらにファイナル・パートではテンポアップして、ジプシーのフォーク・ダンス風ギターへと展開する私の「ダヒュ」。
目下のところ「ダヒュ」は、自分の創るギター音楽の集大成といってよいと思っています。

写真)「ダヒュ」第二部で使用する、ブルース・ギターに欠かせないボトルネック・スライドバー。

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真のロマンティスト ヨハネス・ブラームス

ブラームス

私は幼い頃、母の歌う“ブラームスの子守歌”を聴いて育ちました。
それでかどうかわかりませんが、いまでもブラームスは大好きな作曲家のひとりです。
あの「チェロ・ソナタ第一番作品38」などは、何度聴いてもその感激が薄れることはありませんし、そもそもオリジナルのギター曲を作り出したきっかけも、ブラームスの6つの小品作品118の第二番、「間奏曲イ長調」のようなナンバーをギターで弾きたかったことではじまりました。
また、第二弦楽六重奏曲になどは、心から愛しているにもかかわらず、別れを告げなければならない女性、アガーテ・フォン・ジーボルトに捧げられたとして、その第一楽章(第162-8小節)で、第一ヴァイオリンと第二ヴァイオリンは、a-g-a-d-h-eの音を奏して、アガーテの名を三度も呼び起こしているのです。
なんとロマンティックな!!!

写真)ヨハネス・ブラームス(1833-1897)

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アンダルシアのレモンと、イタリアの濃厚なハチミツに、アタウアルパ・ユパンキの魂が溶け合う、静寂のグロリエータ(四阿)「カンテホンド・イベロアメリカーノ」の音楽世界

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