”シャコンヌ”導入による新解釈版”ギターよ教えておくれ”
来る2010年にむけて、現在、ニューヨークを中心に行うコンサート・プログラムを組んでいます。
そのなかにおいてハイライトのひとつとなるのが、疑うことなくバッハの最高傑作ナンバーのひとつにあげられる、無伴奏ヴァイオリン組曲第二番”のフィナーレを飾る大曲シャコンヌ”の一部を導入した、私独自の解釈によるユパンキの名作ミロンガ”ギターよ教えておくれ”。
今日は、この新しいサウンド・クロスオーヴァーについて少々お話させてください。
写真の楽譜は、私のクラシックギターの恩師、鈴木巌先生ご自身のトランスクリプション、そしてさらに先生の完全ハンドライティングによる”シャコンヌ”譜。
このままの状態で出版できそうなクオリティーの高さです。
私は、鈴木先生からいただいたこの譜面を使って、同曲の研鑽に励みました。
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アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 X
石のチャカレラ(アタウアルパ・ユパンキ)
ほら カミナンテ(旅人)が歌ってる
それはたくさん歩いた旅人さ
いまじゃ セロ・コロラドで静かに暮らしてる
どこへゆこうとも
俺は歌を 風にのせる
俺は果物をたっぷりと実らせる木
*ミストルの木のようさ
馬に鞍をのせて 俺は砂地を進んでく
はるかな道の途中でも ここじゃあつらいことなどみな忘れたよ
**カミニアガ、サンタ・エレーナ、
エル・チュルキ、ラジョ・コルタード
こんないい里 ほかにはないさ
ビバ!セロ・コロラド!
タラの木の木陰
若い娘の声で 俺は急にわれにかえる
“シーッ みんなが来るわ!”
悲しみによく効く薬をあんたにやるよ
ごつい雄イグアナの脂に いい薬草がよくまじってる
石のチャカレラ 粋な***クリオジータ
月のでない晩には 山にひとりでおはいんなさんな
カミニアガ、サンタ・エレーナ、
エル・チュルキ、ラジョ・コルタード
こんないい里 ほかにはないさ
ビバ!セロ・コロラド!
*
南米や、温暖地方に育つ樹木。
**
コルドバ州北部の国道沿いにある集落の名。
サンタ・エレーナは、セロ・コロラドへの玄関口ですが、バスをここで降りるともう一般の交通手段がないため、私はサンタ・エレーナのバス停そば、ラロというおじさんが営むバーでくつろぐトラックの運転手に頼んで荷台にのせてもらい、これまでに三度セロ・コロラドまで行きました。
こういった経験が、いまの私の音楽を強く根底で支えています。
***
南米生まれの娘
この場合、女性名詞の’チャカレラ’を擬人化してひっかけてあります。
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アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 XI
3月16日に行う、ニューヨークエリアのラテンアメリカ系コミュニティー主催によるアタウアルパ・ユパンキへのオマージュ・コンサートの冒頭において、私が奏でるオリジナル・ギターソロ、’風が歌う地-ユパンキに捧ぐ‘をバックに、一遍の壮大な美しさに満ちた詩作が女声の朗読によって読みあげられます。
それが、’歩く大地’と呼ばれた、この南米に生をうけた偉大なる巨人の、その哲学の原点ともいえる、’Tiempo del Hombre (ティエンポ・デル・オンブレ)’です。
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エドワルドの実兄のルイスもまた、ユパンキを驚愕させたというギターの名手でした。
ユパンキの名著 ‘風の歌-El Canto del Viento’ の第十章、‘セロ・コロラドの神秘’ でも、当時8歳のルイスのことが、‘ルイス・マルティネス、驚くべき小僧っ子!’と写真入りで紹介されています。
彼は演奏するときだけは‘ルイス・デル・セーロ’ と名乗っていましたが、プロにはならずに一生精肉業者としてセロ・コロラドで暮し、ワインを片手にギターを弾いた典型的なクリオージョ(地方のいきなアルゼンチン男)でした。
ルイスの弾くチャカレラをまじかで聴いたときは本当に吹っ飛ばされそうでしたが、彼もまた10年前に、エドワルドと同様、ガンで他界してしまいました。
いま彼らが生きていたらどんなによいかと思います。本当に残念でなりません。
ユパンキの‘風の歌’と、本文で紹介されている8歳のルイス・マルティネス
ちゃんとした写真がないのが残念ですが、セロ・コロラドのマルティネス兄弟と一番右から、長男ルイス、次男エドワルド、私、三男ウーゴ、そして長姉チニーナ。
これはスポニチの記事からです。
チニーナ(左)の家族
“セロ・コロラドでは誰もギターを習わない。しかしみなギターを美しく弾けるのだ” アタワルパ・ユパンキ
誇り高きアルゼンチンの‘クリオージョ’たち(中央のジーンズ姿が私)
アンダルシアのレモンと、イタリアの濃厚なハチミツに、アタウアルパ・ユパンキの魂が溶け合う、静寂のグロリエータ(四阿)「カンテホンド・イベロアメリカーノ」の音楽世界