アンデスに響くユパンキの調べ in クスコ

アタウアルパ・ユパンキの素晴らしき詩の世界 VII

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今回のマチュピチュ・コンサートツアーでは、ペルー旅行において、おそらくかの地とその人気度で双璧をなすであろう最大の観光スポット、クスコでも演奏を行います。

クスコは、インディオの言葉’ケチュア’で’ヘソ’を意味する、かつて南米大陸を南北4000キロにわたって支配したインカ帝国の首都として栄えた、標高3400メートルに位置する美しい魅力的な町です。
マチュピチュではパフォーマンス前夜と当日、私たちの宿泊先にもなる最高級ホテル、’サンクチュアリ・ロッジ’の、壮大な遺跡を一望のもとに見渡せるガーデンテラス(息を呑むようなホームページはこちらにおいての、文字通り圧巻ともいえる会場でのコンサートとなりますが、クスコも同様、こちらもやはり宿泊先となる、かつて修道院であった歴史的建造物を改装した、’Best in South America’と謳われる素晴らしいホテル、’モナステリオ・デル・クスコ(ため息がでるようなホームページはこちら‘が会場となります。

このクスコでの演奏において中心となるレパートリーが、アタウアルパ・ユパンキ作になる、アンデス・ムードいっぱいの郷愁ただよう素晴らしいふたつのナンバー、’リャマ追い馬子の歌’と、’ヌンカ・ハマス’です。

リャマ追い馬子の歌(アタウアルパ・ユパンキ)

朝日が燃えながら 俺の山々の頂を染め上げる
俺の山よ!
俺はあの娘を心に想い リャマを追う
これが俺の人生さ!
悲しみとほほえみ
喜びと痛みにみたされて
山よ 山よ 俺の歌よ
お前は 俺の心が泣いているとき
祭りの衣装をまとってあらわれた
俺の心よ!
俺の心よ!
夕べにリャマたちは 追わずとも家路をたどる
かわいいリャマたちや!
ケーナがむせび泣き 俺は道をゆく
これが俺の人生さ!

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ヌンカ・ハマス(アタウアルパ・ユパンキ)

丘をこえて 丘をこえて
俺の足跡 たどってごらん
そこには *ビクーニャの群れがいるだけさ
俺はぜったい みつからないよ
きれいな石ころたどって
俺のすみかをさがしてごらん
そこでは風が歌ってるだけさ
俺はぜったい見つからないよ
インディオたちの道たどって
俺の墓をさがしてごらん
そこにはアンデスの静けさがあるだけさ
俺はぜったい見つからないよ
俺はぜったい見つからないよ
俺はぜったい見つからないよ

* アンデス高原地帯に生息するリャマ科の動物

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‘リャマ追い馬子の歌’は、一部’ビダーラ’のようなリズムになるものの、そのほぼ全編にわたって、味わいのある素朴なギターのアルペジオに終始する、’カンシオン’形式によるナンバーで、いっぽう’ヌンカ・ハマス’は、アンデス高原特有のリズムである’ウァイノ(ウァイニョ、ウァイニート)によって書かれた、珠玉のように美しい調べです。

マチュピチュにおけるコンサートでは、屋外ということもあり、フォルクローレギターの様々なテクニックと音楽性で魅せる、’熟れたトウモロコシの踊り’、’パチャママの踊り’、’インディオの道’、そしてさらには、ケーナやサンポーニャ、チャランゴやボンボを手にした現地のアンデス音楽のコンフント(グループ)との共演で繰り広げるクライマックスの’コンドルは飛んでゆく(これは見もの!!!)’など、ダイナミックなナンバーがレパートリーの中心となりますが、クスコでは(私自身はじめての経験となる、3400メートルの高地での演奏ということもあるため)、静けさに満ちた、哀愁ただようナンバーをじっくり味わっていただきたいと思っています。

このふたつの調べは、現在日本では流通していないファーストアルバム、’ルナ・トゥクマナ’におさめられています。
このアルバムが、ニューヨークのクラシックFM局、WQXRではじめて紹介されたときにオンエアになったのが’ヌンカ・ハマス’だったので、これは私にとってたいへん想い出に残るナンバーですが、同局の名物ディレクター兼パーソナリティーのロバート(ボブ)・シャーマン氏による独特の名調子で、’Never ! Ever ! You can’t find me !’と、英訳された歌詞とともに放送されたこのときの録音テープを、私はいまでもたいせつに保管しています。

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ルナ・トゥクマナ