「Knight’s NY diaries」カテゴリーアーカイブ

ニューヨーク日記

Yukio Mishima: Confessions of a mask 2 (Romance) 三島由紀夫に捧げる組曲「園子」第2楽章

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La continuación de ‘Sonoko,’ una interpretación en vivo de ‘Romance,’ el segundo movimiento de la suite inspirada de ‘Confesiones de una mascara,’ escrito por Yukio Mishima (1925-1970,) el gran fenómeno de nuestro país.

The following part of ‘Sonoko,’ a live performance of ‘Romance,’ the second movement of my three parted solo guitar suite inspired by ‘Confessions of a mask,’ written by Yukio Mishima (1925-1970,) the legendary Japanese phenomenon.

第1楽章「園子」に続く、三島由紀夫の傑作小説「仮面の告白」に霊感を受けた四部構成によるギター組曲の第2楽章「軽井沢のロマンス(愛と葛藤)」のライヴパフォーマンス。

「仮面の告白」は、全編主人公の青年の言葉で綴られる物語だが、僕のギター組曲は4楽章とも全て、悲痛のヒロイン・園子の美貌、そして彼女の心の声をサウンド表現したもので、この第2楽章は、第3楽章「ショパンのノクターン」とともに、第1、第4楽章の緊迫度を和らげる、最もロマンティックな、夏の軽井沢の林のなかに佇む彼女の姿をイメージした、ドリーミーかつ静かな雰囲気を持つ作品。

ビデオに出てくる、林のなかの小さな教会は(まるで軽井沢のようだが)、僕のニューヨーク郊外(フォレストヒルズ)の自宅のすぐそばで撮影した映像で、飼っている犬の散歩コース。
僕はもうここに30年以上暮らしているが、初めてこのエリアを歩いたとき、ここは軽井沢のようだなと感じた。
ニューヨークやコネチカット、マサチューセッツやメイン、そしてニューハンプシャー、ヴァーモントなどの州のあるアメリカの北東海岸は(都市部をいったん離れてしまうと)、どこもこのような、軽井沢を想わせる民家や景色に溢れている。

そして組曲は、園子の絶望の叫びを表現する破局、最終楽章「異形の幻影」へと展開する。

Yukio Mishima: Confessions of a mask 1 (Sonoko) 三島由紀夫に捧げる組曲「園子」第1楽章

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una interpretación en vivo de ‘Sonoko,’ el primer movimiento de la suite inspirada de ‘Confesiones de una mascara,’ escrito por Yukio Mishima (1925-1970,) el gran fenómeno de nuestro país.

A live performance of ‘Sonoko,’ the first movement of my three parted solo guitar suite inspired by ‘Confessions of a mask,’ written by Yukio Mishima (1925-1970,) the legendary Japanese phenomenon.

2020年秋、今もわが国が世界に誇る天才文学者・三島由紀夫の没後50年を記念し、僕は彼の傑作長編小説「仮面の告白」に霊感を得た、全3楽章構成の組曲「園子」を作曲した。

これは、駅の階段をプラットフォームへと、ふたりの妹たちを伴って降りてくる、蒼いコートを纏った美しき令嬢・園子の、”光を振動させながら優雅に現れる夜明けの使者”のような天空的美貌、そして彼女の類稀なる美しさにただ茫然とする主人公の胸の高鳴りをサウンド表現した第1楽章「園子」のライヴパフォーマンス。

組曲はこのあと、第2楽章「愛と葛藤(軽井沢のロマンス)」第3楽章「ショパンのノクターン」、そして最終楽章「異形の幻影〜不在」へと続く。

García Lorca: La Casa de Bernarda Alba ロルカの嘆きと狂気の館「ベルナルダ・アルバの家」霊感ギターソロ

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Adela (La Casa de Bernarda Alba / Bernarda Alba’s House)
J.S. Bach Improvisation II

1. Casa de Adela (Adela’s House) “Allemande BWV. 1011”
2. Llanto (Cry)
3. Locura (Madness)

Una interpretación en directo de mi obra para solo de guitarra con tres partes, inspirado por un gran fenómeno español.
Grabado en vivo en ‘CLUB MANDALA TOKYO’ el 14 de abril, 2017.

A premier live performance of my three parted guitar solo inspired by ‘Bernarda Alba’s House,’ written by the greatest Spanish phenomenon.
Recorded live at ‘CLUB MANDALA TOKYO’ on the 14th of April, 2017.

アデーラ(ベルナルダ・アルバの家)
J.S. バッハ・インプロヴィゼーション第2番

1.アデーラの家(無伴奏チェロ組曲第5番’アルマンド’)
2.嘆き
3.狂気

ガルシア・ロルカの遺作となった傑作戯曲「ベルナルダ・アルバの家」にモティーフを得た、バッハの名曲をインプロヴァイズ展開する、三部構成によるギターソロのライヴパフォーマンス。

「ベルナルダ・アルバの家」は、約100年前のアンダルシアの村を舞台に、夫を亡くした絶対君主的存在の母親ベルナルダが、喪に服すために5人の娘たちに七年間の外出禁止を強要、やがて大悲劇が訪れるというストーリー。
1936年のフランコ独裁政権によるロルカの銃殺後、スペインでは上演が許されなかったため、1945年3月8日、ブエノスアイレスのアベニーダ劇場において、スペインの大女優・演出家のマルガリータ・シルグ率いる劇団によって初演された歴史を持つ。

ロルカはこの常軌を失った母親に、同じように日々狂気化してゆく当時のスペインをオーヴァーラップさせたのだろう。

このギターソロは、そのなかのメインキャラクターである、最も若く美しい末娘のアデーラにスポットを当てたもので、可憐な美少女が、じょじょに狂気化してゆくさまをサウンド表現した作品。
2017年4月14日、東京南青山クラブ・マンダラにおける公演のオープニングとして初演した。
これはその際のライヴ動画で、オリジナルのビデオ撮影は、日本を代表するドキュメンタリー映像作家・羽田澄子さんが担当してくださった。

また同年9月、ソウル公演の際には、韓国を代表する現代舞踊団「チャンム(創舞)」の四名の最高水準の女性ダンサーがこのナンバーに振付を行い、素晴らしいコラボレーティヴ・パフォーマンスを披露してくれた。

プレイしている楽器は、クロサワ楽器日本総本店クラシックギターフロアとのご縁で使用させていただいているホアン・エルナンデス(コンシエルトS)
いい音で’泣いて’くれる。

García Lorca: San Gabriel -Sevilla- ガルシア・ロルカの真髄:ジプシーたちの守護神「大天使・聖ガブリエル」に捧げるギターソロ

Un solo de guitarra inspirado por ‘San Gabriel -Sevilla-(Romancero Gitano)‘ del gran poeta español, gravado en vivo durante mi recital en la sala principal de Yamaha Hall Tokio (18. IV 2014.)

A guitar solo inspired by García Lorca’s ‘San Gabriel -Sevilla- (Gypsy ballads),’ recorded live during my recital at Yamaha Hall Tokyo in April 18th, 2014.

ガルシア・ロルカ「聖ガブリエル 〜セビリア(セビージャ)〜」に寄せる二部構成ギターソロ
J.S.バッハ・インプロヴィゼーション第3番

第一楽章:アダージョ/ヨハン・セバスティアン・バッハ
第二楽章:アレグロ/大竹史朗

2014年4月18日、東京銀座ヤマハホールにおけるライヴ録音

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幅広い肩、
エレガントな腰つき、夜に実る林檎のような肌、
哀しげな口、大きな瞳、
熱い銀がつくる神経、
それは人気のない通りを彷徨う 美しい水草の坊や
そのエナメルの履き物が 
天空のふたつのリズムとともに 大気のなかのダリアを引き裂く
海辺の椰子にも 冠を戴く皇帝にも
道をゆく輝かしいカミナンテ(道ゆくもの)にも
それに勝るものはいない
胸の碧玉(へきぎょく)に その頭(こうべ)が傾くとき、
夜はひれ伏すために 平原を探す
そしてギターが歌い出す 
椰子の木のドマドール(調教師)、柳の木のエネーミゴ(仇)
大天使・聖ガブリエルのために
聖ガブリエル、母親の子宮で産声をあげる坊や
あなたに衣服を贈ったのは
ジプシーたちであることを忘れてはいけない

王たちのみ告げ
新月の輝きと 粗末なジプシーの装いが
通りをやってくる宵の明星のために扉をあける
大天使・聖ガブリエル
ユリと微笑みの血が混ざりあった
ラ・ヒラルダ(*)の末裔が
いま姿を現わす
その刺繍ヴェストのなかに縫いとられた
隠されたコオロギたちが 脈打ち踊り
夜の星たちは ハンドチャイムに姿を変える
私はここにいるよ! 聖ガブリエル!
三つの喜びの釘とともに
あなたの輝きが 私の燃え上がる顔のうえで ジャスミンを香らせる
あなたに神のみ救いあれ! 聖なるみ告げ!
神秘のモレーナ(黒髪の女)よ!
あなたが授かったのは そよ風のなかに揺れる どんなに若い茎よりも美しい坊や
聖ガブリエル!私の瞳のなかの光!
愛するガブリエル!私の人生の喜び!
私はあなたに カーネーションの王座を与える夢をみる
あなたに神のみ救いあれ!聖なるみ告げ!
新月の輝きと 粗末なジプシーの装い
モレーナのみ胸には 三つの傷をもった坊や
ああ!光り輝く聖ガブリエル!
愛するガブリエル!我が人生の喜び!
私の胸の奥で 暖かなミルクがいま生まれようとしている
あなたに神のみ救いあれ!聖なるみ告げ!
神秘のモレーナ!幾千の王朝の母よ!
乾いた砂丘が あなたの瞳のなかに 光り輝く騎士を映しだす

乳房に抱かれ 驚愕のみ告げを受け歌う坊や
三つの緑のアーモンドの銃弾が
その震えるささやき声のなかで 揺れている
聖ガブリエルは すでに天へとむかう梯子のうえ
夜の星たちは ’永遠’へと姿を変える

(*) セビリア(セビージャ)を象徴する、同市にある聖堂の名称

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大天使・聖ガブリエル」は、一見、僕が深く携わるユパンキの詩の世界とは特に共通点を持たないように見えるが、実はこれ、スペイン語の言語で読むと(本当に笑えるくらい)ユパンキがロルカの試作型式に影響を受けていたかが最もよくわかる作品。

セビリア(セビージャ)の守護神的存在の聖ガブリエルは(ちょうどイエス・キリストを授かった聖マリアのような)、褐色の肌のモレーナから人の子として生まれ、ジプシーたちによって育まれたのち、天界へと旅立っていったのだろうか?
また、”三つの喜びの釘”とは、十字架に打ち付けたられたイエス・キリストの復活を意味するものなのか?
僕の解釈と翻訳は決してベストではないが、ロルカの無限の詩的発想には、全くもって舌をまく思いだ。

ユパンキは、こういったロルカの天空的広がりを持つ力強い、そして自然界とのつながりを描写した作風を心から愛し敬い、「ティエンポ・デル・オンブレ(人の時間)」や、「ギターラ」といった、きわめて優れた南米風アダプテーションを作り上げたといって間違いない。

ロルカ・インスピレーションをクリエイトすること。
僕にとってそれは、同時にユパンキへの最大のオマージュになることは言うまでもない

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「大天使・聖ガブリエル」は、1924年から1927年の間に書かれたロルカの傑作詩集「ロマンセーロ・ヒターノ(ジプシー歌集)」のなかにおさめられた作品。

すでに書かれて約100年が経過するが、この発想と感覚は、我々現代人がどうあがいても真似することのできない”きわめて斬新なモダニズム”と言っていい。

ロルカに限らず、音楽や文学、そして視覚芸術などでも、いまの文化やアートなどというものは、この時代に匹敵しないどころか、到底追いつくことのできない遅れをとってしまっている。
進んだのは電気による発明だけだ。

僕は何の才能も持たないミュージシャンだが、ロルカ・インスピレーションの作品を作るとき、間違いなく先を進んでいることだけは、自信を持って言い切ることができる。